人口減少時代の生存戦略──日本企業がインドネシアに拠点を持つ意味
「成長し続ける前提」は、もう崩れている

日本は本格的な人口減少局面に入りました。
総人口は減少傾向が続き、高齢化率は30%を超える水準へと進んでいます。
これは単なる統計上の変化ではありません。
企業経営にとっては、「市場の縮小」「労働供給の減少」「社会保障負担の増大」という三重苦を意味します。
加えて、
慢性的な人材不足
円安によるコスト増
国内市場の成長鈍化
これらは一時的な景気循環ではなく、構造的問題です。
つまり、日本企業は「成長し続ける前提」で経営計画を立てることが難しくなっています。
これまでのように、国内市場が緩やかに拡大し、雇用が安定し、資金調達が容易であるという環境は、もはや自明ではありません。
Bahteraの記事でも指摘されている通り、インドネシアは若年人口が多く、消費市場が拡大している国として注目されています。
平均年齢は約30歳前後。人口は約2.7億人規模。中間層が拡大し、内需主導の経済成長が続いています。
しかし重要なのは、「攻めの拡大戦略」ではなく、
“日本一本足打法からのリスクヘッジ”という視点です。
本記事では、法律面からインドネシア拠点保有の意味を整理します。
一本足打法という経営リスク
日本企業の多くは、売上の大半を国内市場に依存しています。
これは長らく合理的な選択でした。市場規模が大きく、法制度が安定し、文化的理解も深い。
しかし人口減少時代において、一本足打法はリスクとなります。
・国内消費の縮小
・価格競争の激化
・採用難による人件費上昇
・社会保険料負担増
これらは同時進行で進みます。
仮に国内景気が悪化した場合、売上の大半を日本に依存している企業は、経営全体が大きく揺らぎます。
分散経営とは、この構造的リスクを下げる戦略です。
金融投資であれば、ポートフォリオを組みます。
同じように、売上ポートフォリオを組むという発想が必要です。
国内70%、海外30%。
あるいは国内60%、海外40%。
この構造を持つことで、国内不況の影響を緩和できます。
インドネシアは、その第二の足として有力な候補となります。
なぜインドネシアが“分散先”として有効なのか
日本企業が直面している最大の課題は、「不確実性の増大」です。
人口減少、国内市場の成熟、為替変動、人材不足――。これらは単発の問題ではなく、複合的に絡み合う構造課題です。
その中で、海外市場をどう位置付けるかが問われています。
拡大戦略としての海外進出ではなく、リスク分散の一環としての海外展開。
その視点で見たとき、インドネシアは極めて合理的な選択肢になります。
① 人口構造の安定
人口:約2.7億人
平均年齢:約30歳
中間層拡大中
若年層中心の内需拡大型経済。
インドネシア最大の強みは、人口構造の健全さです。
日本は人口減少と高齢化が同時進行しています。
一方でインドネシアは、生産年齢人口が厚く、今後も一定期間増加が見込まれています。
人口ピラミッドが安定しているということは、
・消費が継続的に発生する
・労働力が供給される
・住宅需要が維持される
・教育・医療需要が拡大する
という循環が機能しやすいという意味です。
平均年齢約30歳という若さは、単なる数字以上の意味を持ちます。
若年層が多い社会では、
・ブランド受容性が高い
・新サービス導入が早い
・デジタル適応が進む
という特徴が見られます。
中間層の拡大も重要なポイントです。
都市部では所得水準の向上が進み、
・外食頻度の増加
・フィットネス・美容への支出
・教育投資
・ITサービス利用
が拡大しています。
人口が減らない市場は、それだけで分散先としての価値があります。
市場が自然に縮小していく国と、拡大基調にある国では、経営の前提が根本的に異なります。
デジタル経済の加速
GoTo
Tokopedia
などの企業がデジタル経済を牽引。
インドネシアは東南アジア最大級のデジタル市場です。
マートフォン普及率が高く、若年層を中心にオンライン消費が急拡大しています。
GoToは配車、フードデリバリー、決済を統合したプラットフォームを構築し、日常生活のインフラとなっています。
Tokopediaは国内最大級のECモールとして、数百万の事業者と消費者を結びつけています。
これらの企業の成長は、日本企業にとって次のような意味を持ちます。
・越境ECから参入可能
・オンライン広告で精緻な市場検証が可能
・初期投資を抑えたテストマーケティングが可能
つまり、「大規模投資をしなくても市場を試せる」環境が整っています。
分散先として重要なのは、参入ハードルが調整可能であることです。
小さく始め、反応を見て拡張する。
この柔軟性は中堅企業にとって極めて重要です。
② 成長率の持続性
GDP成長率は約5%前後を維持。
ASEAN最大の市場。
経済成長率5%という数字は、企業経営にとって大きな意味を持ちます。
成長市場では、
・売上が自然増しやすい
・価格転嫁が比較的可能
・投資回収期間が短縮しやすい
といった利点があります。
インドネシア経済は資源依存型から内需主導型へとシフトしています。
個人消費の割合が高く、消費市場としての安定性があります。
ASEAN最大の人口を抱える国でありながら、内需中心の構造を持つ点が特徴です。
これは外需依存国と比較した際の安定要因になります。
外部ショックがあっても、国内消費が一定程度下支えします。
第二の収益源という発想
「攻め」よりも、第二の収益源確保という意味で価値があります。
ここが最も重要な視点です。
海外進出を「一発逆転の拡大戦略」として考えると、失敗リスクが高まります。
しかし、
・国内売上が横ばいでも海外が伸びる
・為替変動の影響を分散できる
・国内人材不足を補完できる
という構造を作ることができれば、それは守りの戦略です。
一本足打法はリスクです。
二本足、三本足にすることで安定性が増します。
インドネシアはその“二本目の足”として機能し得る市場です。
なぜ今なのか
人口ボーナス期は永遠ではありません。
若年層が多く、経済成長が安定している今が参入タイミングとして重要です。
市場が成熟してから参入すると、競争は激化し、コストは上昇します。
分散とは、余裕のあるうちに準備することです。
追い込まれてからではなく、選択肢があるうちに。
しかし制度理解なしでは生存戦略にならない
インドネシアは「成長市場」であると同時に、「制度設計型市場」です。
人口約2億7,000万人、若年人口比率が高く、GDP成長率も堅調。デジタル経済は急拡大し、製造業・インフラ・消費関連産業でも投資が続いています。しかし、この魅力的な市場で持続的に生き残れるかどうかは、「制度を理解しているかどうか」に大きく左右されます。
インドネシア進出には厳格な法制度が存在します。
それは単なる手続き上の問題ではなく、事業モデルそのものを左右する要素です。
市場分析やマーケティング戦略だけでは、生存戦略になりません。
投資法、会社法、競争法、労働法という4つの柱を横断的に理解して初めて、「実行可能な戦略」になります。
以下、制度ごとにその本質を解説します。
① 投資法(Law No.25 of 2007)
外資企業(PMA)は投資法に基づき設立。
インドネシアで外国資本が事業を行う場合、基本的な法人形態はPT PMA(Penanaman Modal Asing)です。この根拠法が投資法(Law No.25 of 2007)です。
投資法は、
・外国投資家の権利保護
・法的確実性の確保
・公平性の原則
・国家管理権限
を規定しています。
しかし、実務で最も重要なのは「業種別外資規制」です。
業種別外資規制
ポジティブリスト制度
現在はポジティブリスト制度により、外資開放業種・制限業種が明文化されています。ただし、この制度は自動的に適用されるわけではありません。企業側が正しく業種を分類し、適切なKBLIコードを登録する必要があります。
KBLIコード確認必須
KBLI(Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesia)は事業分類コードですが、単なる統計上の番号ではありません。
KBLIによって、
・外資比率制限
・必要な許認可
・監督官庁
・リスク区分(OSS制度上のリスク分類)
が決定されます。
たとえば、同じ「ヘルスケア関連」でも、
・医療行為
・美容サービス
・サプリメント販売
・デジタル健康アプリ
では外資制限や取得すべき許認可が異なります。
誤認は営業停止リスク。
KBLIの誤登録は、
・許認可の無効
・事業停止命令
・追加投資要求
に発展する可能性があります。
実際に「参入可能な分野であったにもかかわらず、コード設計の誤りで営業が止まった」事例は存在します。
つまり、投資法は“入口”の問題でありながら、事業の根幹を左右する制度です。
② 会社法(Law No.40 of 2007)
インドネシアの会社法は、形式要件を非常に重視します。日本の実務感覚で進めると、思わぬリスクを抱えることになります。
株式譲渡は公証人手続き必須
株式譲渡は単なる私的契約では完結しません。公証人立会いのもとでの手続きが必要です。
法務人権省登録
さらに、法務人権省(MOLHR)への登録を経て初めて法的効力が確定します。
株主総会決議義務
一定の株式移転や定款変更には株主総会決議が必要です。
M&Aでも形式要件が重要。
SPA(株式譲渡契約)を締結しただけでは不十分です。
以下の流れを正確に踏む必要があります。
・株主総会決議
・公証人手続き
・定款変更
・MOLHR登録
・OSS情報更新
形式不備は効力無効リスク
登録漏れや記載不備があると、
・株主権限行使不可
・銀行手続き停止
・ライセンス更新不能
など、実務上深刻な影響を及ぼします。
インドネシアは「契約締結=完了」という国ではありません。
形式を経て初めて効力が発生する制度設計です。
しかし裏を返せば、ルールを守れば安定的に権利が保護される環境でもあります。
③ 競争法(Law No.5 of 1999)
一定規模以上のM&Aで
KPPUへの30日以内届出義務。
インドネシアでは、一定の売上・資産基準を超える企業結合に対して、KPPU(Komisi Pengawas Persaingan Usaha:競争委員会)への届出が義務付けられています。
これは事後届出型ですが、無視はできません。
無届は制裁金対象
届出義務違反は制裁金や是正命令の対象になります。
JETRO資料でも重要論点。
ジェトロの各種資料でも、外資企業が見落としやすい論点として競争法届出が挙げられています。
市場拡大とともに規制は強化傾向にあります。
特に、
・デジタルプラットフォーム
・EC
・物流
・金融
といった分野では監視が強化されています。
M&A価格算定にも影響
競争法審査が長期化すれば、クロージング遅延や条件変更が生じます。したがって、競争法リスクはバリュエーションやスケジュール設計に直結します。
競争法は単なる形式手続きではなく、事業戦略の一部です。
④ 労働法(Law No.13 of 2003)
インドネシアの労働法は、東南アジアでも特に労働者保護色が強い制度です。
解雇時退職金:最大32ヶ月分
勤続年数や解雇理由に応じて、退職金(セベランス)が増加します。最悪ケースでは、基本給32ヶ月分相当となる可能性があります。
最低賃金(ジャカルタで月500万ルピア超)
最低賃金(UMR)は州ごとに設定され、ジャカルタは約500万ルピア超と高水準です。
労務リスクは財務リスク。
例えば、100人規模の事業で解雇が発生すれば、数億円規模の支払いが生じる可能性があります。
さらに、
・労使協議義務
・労働裁判所手続き
・宗教行事への配慮
・有期契約の厳格な運用
など、実務負担は大きいです。
M&Aでは労働契約が承継されるため、潜在債務は買収側が引き継ぎます。
労働法を軽視すると、
・長期紛争
・SNS炎上
・ブランド毀損
に発展します。
制度は「障壁」ではなく「設計条件」
インドネシアは規制が多い国ではありません。
制度が明確な国です。
投資法で入口を設計し、
会社法で形式を整え、
競争法で市場影響を確認し、
労働法で人材戦略を構築する。
これらを統合的に設計して初めて、「生存戦略」になります。
制度理解なしの進出は、
・営業停止
・無効契約
・制裁金
・巨額退職金
という形でコスト化します。
しかし、制度を理解して設計すれば、
インドネシアは極めて魅力的な成長市場です。
制度を知らずに挑むか。
制度を味方にするか。
この違いが、撤退と成功を分ける分岐点になります。
拠点保有の方法:新設かM&Aか
インドネシアで事業拠点を持つ方法は大きく分けて「新規設立」と「M&A(既存企業の取得)」の2つがあります。どちらが正解という単純な話ではなく、企業の体力、目的、時間軸、そしてリスク許容度によって最適解は変わります。重要なのは、感覚ではなく制度理解に基づいて選択することです。
インドネシアは、投資法(Law No.25/2007)、会社法(Law No.40/2007)、労働法(Law No.13/2003)、競争法(Law No.5/1999)など複数法体系が重層的に絡み合う市場です。拠点保有の方法は、単なる経営判断ではなく「法制度設計の問題」でもあります。
新規設立
インドネシアで外資として事業を行う場合、一般的にはPT PMA(外資系株式会社)を設立します。これはインドネシア会社法に基づく法人形態であり、OSS(Online Single Submission)システムを通じた登録が必要です。
メリット:
自由度高い
最大のメリットは、ゼロから設計できる自由度です。
・事業目的
・KBLI(事業分類コード)
・資本構成
・株主構成
・役員体制
・内部統制
すべてを戦略に沿って構築できます。合弁にせず100%外資で持つことが可能な業種であれば、意思決定スピードも速く、日本本社の戦略をそのまま反映できます。
また、最初から労務設計や税務設計を最適化できるため、将来的な統合コストを抑えられる可能性があります。特にフィットネス、消費財、デジタル事業など拡張性を前提とする事業では、自由度の高さは大きな武器になります。
デメリット:
許認可取得負担
投資額(100億ルピア目安)
デメリットは明確です。まず、許認可取得の負担です。
NIB(事業基本番号)
業種別ライセンス
環境許可
場合によっては酒類販売許可などの特別許可
これらを段階的に取得する必要があります。KBLI選定を誤ると、外資規制違反や営業停止リスクが生じる可能性があります。
さらに、最低投資額の要件があります。現在の基準では、原則として総投資額100億ルピア(約9〜10億円規模ではなく約1億円前後)を目安とするケースが多く、資本金要件も一定水準が求められます。中堅企業にとっては心理的・資金的ハードルになります。
加えて、労働法上の雇用設計を最初から適切に行わなければなりません。インドネシアでは解雇時に最大32ヶ月分相当の退職金が発生するケースがあり、制度を軽視した採用は後に重いコストとなります。
M&A
一方で、既存企業を取得するM&Aは、時間と制度対応コストを短縮できる選択肢です。
メリット:
既存許認可
人材・販路確保済み
既に営業許可を持ち、事業運営実績がある企業を取得すれば、ゼロからの申請プロセスを回避できる可能性があります。
・ライセンス取得済み
・地場取引先との関係構築済み
・従業員体制確立済み
市場浸透までの時間を大幅に短縮できる点は大きな利点です。
特に、競争が激しい都市部(ジャカルタ、スラバヤ、バリなど)では、既存ネットワークの価値は計り知れません。販路やブランド認知を“買う”という考え方は合理的です。
デメリット:
未払税金
労働紛争
土地権利(HGB)問題
しかし、M&Aはリスクも同時に引き継ぎます。
未払税金があれば、買収後に税務調査で発覚する可能性があります。法人税22%、VAT11%、地方税など複雑な税制下では、過去の処理ミスが重大な債務に転化することがあります。
労働紛争も重要です。未払い残業代、PKWT(有期契約)の不適切運用、宗教大祭手当(THR)の未払いなどが潜在債務となるケースがあります。
土地権利(HGB:Hak Guna Bangunan)の残存期間や担保設定状況も確認が必要です。インドネシアでは土地は国家所有であり、利用権の期限や更新条件を理解せずに取得すると将来リスクになります。
Business Lawyersでも、東南アジアM&AはDDが成否を分けると指摘。
デューデリジェンス(DD)は単なる形式確認ではなく、
・株主名簿の整合性
・外資規制適合性
・OSS登録の有効性
・労務債務
・税務リスク
・競争法(KPPU)届出義務
を横断的に精査するプロセスです。価格交渉よりもDDの質が結果を左右します。
中堅企業にこそ必要な分散戦略
大企業は既に多拠点展開。
しかし中堅企業は国内依存度が高い。
日本市場は人口減少と成熟化が進み、成長率は限定的です。中堅企業の多くは売上の大半を国内に依存しています。為替変動、原材料価格上昇、国内需要縮小というリスクを一国で受け止める構造は、2030年代において大きな脆弱性となり得ます。
だからこそ、拠点保有は「攻め」ではなく「守り」の戦略として考えるべきです。
人口減少時代の生存戦略は:
✔ 市場分散
✔ 通貨分散
✔ 人材分散
✔ 法制度分散
市場分散とは、売上構造を複数国に広げること。
通貨分散とは、為替リスクを緩和すること。
人材分散とは、労働市場の縮小リスクを補完すること。
法制度分散とは、一国の規制変更リスクを緩和すること。
インドネシアは人口約2.7億人、平均年齢約30歳という若年構造を持ち、消費市場としての拡張余地があります。しかし、それは制度理解を前提とした場合に限ります。
新設かM&Aかの選択は、
「どちらが簡単か」ではなく、
「自社の分散戦略にどちらが適合するか」
で判断すべきです。
そしてどちらを選ぶにしても、
投資法
会社法
労働法
競争法
外国人雇用制度
を横断的に理解した設計が不可欠です。
拠点保有はゴールではありません。
分散経営を実装するための“器”です。
制度を理解しない拠点はリスクになり、
制度を理解した拠点は資産になります。
中堅企業こそ、今こそ制度理解から分散戦略を設計すべき時です。
実行伴走の重要性
インドネシア進出において、最も誤解されやすいのが「情報を得れば進出できる」という考え方です。確かに、市場規模、人口動態、GDP成長率、消費トレンドといったマクロ情報は重要です。しかし、それらはあくまで“前提情報”に過ぎません。実際の進出プロジェクトは、制度理解・許認可取得・契約実行・資本設計・労務管理といった具体的なアクションの連続です。
多くの企業がつまずくのは、情報収集段階と実行段階の間に大きな断絶があるからです。市場調査レポートを読み、現地視察を行い、可能性を感じたとしても、いざ法人設立やM&A、パートナー契約に進む段階で、法制度の壁に直面します。
その壁を乗り越えるために必要なのが「実行伴走型支援」です。
PT Japan Fitness Indonesia
PT Japan Fitness Indonesiaでは、
外資規制チェック
法務DD
M&A設計
実行支援
まで一気通貫で対応。
単なる市場紹介ではなく、
制度設計型支援が不可欠です。
外資規制チェックでは、KBLIコードの精査、ポジティブリスト確認、出資比率制限の検証を行い、事業モデルが法的に成立するかを判断します。ここを誤ると、後から資本構成の再設計が必要となり、時間もコストも大幅に増加します。
法務DDでは、対象企業やパートナーの契約関係、許認可状況、労務債務、税務リスクなどを洗い出します。インドネシアではOSS登録未更新や許可期限切れといった問題が散見されます。これらを見逃せば、買収後に営業停止や罰金といったリスクが発生します。
M&A設計では、単なる価格交渉ではなく、SPA(株式譲渡契約)やSHA(株主間契約)の設計を通じて、表明保証の範囲、責任分担、デッドロック条項などを明確化します。日本本社のガバナンス基準とインドネシア法制度をどう整合させるかが鍵となります。
実行支援では、公証手続き、法務人権省登録、OSS更新、銀行口座開設、ライセンス取得など、現地実務を完了させるまで伴走します。理論だけではなく、最終的に営業開始まで持っていくことが重要です。
実行伴走とは、単なるアドバイスではありません。制度理解を事業構造に落とし込み、実務として完遂することです。
まとめ:人口減少時代の拠点戦略
日本は人口減少社会に突入し、市場の縮小は構造的に避けられません。国内市場は依然として重要ですが、それに依存し続けることは経営上の大きなリスクとなります。
インドネシアは「攻め」ではなく、
✔ 保険
✔ 第二の柱
✔ 生存戦略
としての価値が高い市場。
人口約2億7,000万人、若年層中心の人口構造、内需拡大、ASEANハブ機能。これらは、単なる成長市場という意味を超え、経営リスク分散の拠点としての可能性を示しています。
しかし成功には、
投資法(Law No.25/2007)
会社法(Law No.40/2007)
競争法(Law No.5/1999)
労働法(Law No.13/2003)
の理解が前提。
投資法は外資規制と投資保護の枠組みを規定し、会社法は法人運営の基盤を定めます。競争法は一定規模以上のM&Aに届出義務を課し、労働法は雇用関係を厳格に規律します。
これらを断片的に知るのではなく、統合的に理解し、事業設計に組み込むことが不可欠です。
日本一本足打法からの脱却こそ、
2030年代を生き抜く戦略です。
分散戦略は思いつきでは実現しません。
制度理解から始まる戦略設計と、実行まで伴走する体制が必要です。
インドネシアを“逃げ場”にするのではなく、“第二の柱”にする。
そのためには、法制度を制し、リスクを構造化し、持続可能な拠点を築くこと。
人口減少時代の経営戦略は、今まさに再設計の時期にあります。


