成功する企業は何が違うのか──インドネシア進出コンサルの役割
なぜ同じインドネシア進出でも「成功企業」と「撤退企業」に分かれるのか

東南アジア最大の人口約2億7,000万人を擁するインドネシア。
日系企業の進出先としては、中国に次ぐ重要拠点とされ、製造業・商社・IT・小売・外食など多岐にわたる業種が進出しています。
しかし現実はどうでしょうか。
同じ市場に挑戦しても、
・3年以内に黒字化する企業
・想定外の法規制により事業停止となる企業
・ライセンス取得に1年以上を要する企業
明暗は大きく分かれます。
その差を生む最大の要因が、**「法律理解の深さ」と「実務レベルでの対応力」**です。
本記事では、
インドネシア進出において企業の成否を分ける法的ポイントと、進出コンサルの具体的役割について、実在する法令名・制度名を交えながら詳しく解説します。
インドネシア進出の法的基盤を理解しているか
投資法の中核:「2007年投資法(Law No.25 of 2007)」
インドネシアの外資規制の基本となるのが、**2007年投資法(Undang-Undang No.25 Tahun 2007 tentang Penanaman Modal)**です。
この法律では、
外資企業は原則として「PT PMA(Penanaman Modal Asing)」として設立
最低投資額は通常100億ルピア(約1億円相当)以上
払込資本金は25億ルピア以上が原則
といった基本要件が定められています。
ここで重要なのは、「数字を知っているかどうか」ではなく、「どう設計するか」です。
成功企業は、法人設立前の段階で以下を整理しています。
・自社事業のKBLIコード(事業分類コード)の特定
・外資出資比率の上限確認(大統領令第10号/2021号)
・将来の増資・株式譲渡のシナリオ設計
・親会社との取引スキーム(移転価格税制対応)
・投資額の段階的投入計画
つまり、「設立」ではなく「5年後の再編」まで視野に入れています。
一方で撤退企業の典型例は、
・KBLIコードを安易に選定
・事業追加時に再許認可が必要になる
・外資比率制限に後から気付く
・ローカルパートナーとの契約不備
といった“設計不足”です。
設立はゴールではありません。
投資法を「読む」だけでなく、「使える」かどうかが分岐点です。
許認可制度を理解しているか
OSS-RBA制度とリスク分類の理解

2020年の雇用創出法(Law No.11 of 2020)により、インドネシアの許認可制度は大きく変わりました。現在は**OSS-RBA(Online Single Submission – Risk Based Approach)**が中核です。
事業はリスクレベルによって分類され、
・低リスク:NIB取得のみ
・中リスク:自己宣言+標準証明
・高リスク:事前許可+実地審査
という区分になります。
成功企業は、
・自社事業がどのリスク区分か
・必要な追加ライセンス(営業許可・環境許可等)
・地方政府との調整ポイント
を事前に把握しています。
撤退企業の多くは、
「NIBを取得した=営業可能」と誤解します。
実際には、
・食品ならBPOM登録
・化粧品ならハラール認証
・建設業ならBUJK登録
・医療関連なら保健省許可
など、追加規制が存在します。
この差は、黒字化スピードに直結します。
労働法リスクを管理できているか
2003年労働法と雇用創出法改正の実務
インドネシアは労働者保護色が強い国です。
2003年労働法(Law No.13 of 2003)は、解雇規制・退職金制度を厳格に定めています。
雇用創出法により退職金上限は一部見直されましたが、それでも日本より高コストになるケースが多いのが実態です。
成功企業は、
・雇用契約書(PKWT / PKWTT)の適切設計
・試用期間の合法的運用
・労使紛争時の調停手続き理解
・最低賃金(UMR)改定への対応
を制度前提で組み立てます。
撤退企業は、
・契約社員を無期限化と誤認
・解雇手続き違反
・労働組合との対立
・宗教休暇・THR支給義務の未理解
といった初歩的ミスでコストを膨らませます。
労務は“コスト”ではなく“設計領域”です。
税務・移転価格の設計ができているか
法人税・VAT・移転価格税制
インドネシアの法人税率は現在22%(一定条件で軽減あり)。
VAT(付加価値税)は11%。
しかし問題は税率ではありません。
・関連会社間取引
・ロイヤルティ支払
・サービスフィー
・マネジメントフィー
に対する税務当局の監査強化です。
成功企業は、
・事前に移転価格文書(TP Doc)を整備
・契約書を英語+インドネシア語で整備
・税務調査を想定した証憑管理
を行います。
撤退企業は、
「日本本社とのやり取りだから大丈夫」と軽視し、
後に追徴課税を受けます。
税務は事後対応では遅いのです。
ローカルパートナーとの契約設計
会社法(Law No.40 of 2007)の活用
インドネシアでは、会社法に基づき取締役(Direksi)と監査役(Komisaris)の設置が必要です。
ローカルパートナーを入れる場合、
・株主間契約(SHA)
・デッドロック条項
・株式譲渡制限
・配当方針
を緻密に設計する必要があります。
成功企業は、
将来的な買収・撤退まで契約書に織り込みます。
撤退企業は、
“信頼関係”のみで設立し、
出口設計をしていません。
進出コンサルの役割は「書類作成」ではない
本質は“戦略設計”
進出コンサルの役割を誤解している企業も少なくありません。
単なる法人設立代行ではなく、
・業種分類設計
・外資比率設計
・税務スキーム設計
・労務設計
・将来のM&A戦略設計
まで含めた“統合設計”が本質です。
成功企業は、
進出前に半年以上かけて制度分析を行います。
撤退企業は、
「まず作ってから考える」姿勢です。
成功企業の共通点
成功企業の特徴は明確です。
・制度変更を常にウォッチ
・法改正に合わせて即時対応
・ローカル幹部育成
・許認可取得を前提に事業設計
・数字より法令を重視
つまり、
制度を味方にしているのです。
オムニバス法(Job Creation Law)とその影響
2020年に施行された**雇用創出法(通称オムニバス法:Law No.11 of 2020)**は、インドネシアの投資環境を根本から変えた歴史的な法改正です。正式名称は「雇用創出に関する法律」であり、70本以上の既存法を横断的に改正する“包括改正法”として制定されました。
インドネシア政府がこの法律を導入した背景には、投資手続きの煩雑さ、中央と地方の規制の重複、ライセンス取得の長期化、労働規制の硬直性といった課題がありました。世界銀行のビジネス環境ランキング(Doing Business)での順位向上も政策目標のひとつとされていました。
特に重要なのは、
ネガティブリストの廃止
リスクベースアプローチ(Risk-Based Licensing)の導入
OSS(Online Single Submission)制度の刷新
という三つの構造転換です。
ネガティブリストの廃止
従来のインドネシア投資制度では、外資規制は「ネガティブリスト(DNI)」という形で管理されていました。業種ごとに外資出資比率が明示され、例えば小売業は最大67%、流通業は49%など、明確な制限が存在していました。
オムニバス法により、このネガティブリスト制度は廃止され、原則自由化へ転換されました。現在は「ポジティブリスト」という形で、制限される業種を限定的に列挙する方式に変更されています。
これは表面的には規制緩和ですが、実務的には“規制の質が変わった”と理解するべきです。外資比率制限が撤廃された分野が増えた一方で、業種分類(KBLI)とリスク区分による管理が厳格化されました。
リスクベースアプローチ(Risk-Based Licensing)の導入
最大の制度変化は、事業許可の考え方が「業種規制型」から「リスク管理型」へ移行したことです。
これにより、すべての事業はリスク区分に分類されます。
例えば、
| リスク区分 | 必要手続き |
|---|---|
| 低リスク | NIB取得のみ |
| 中リスク | NIB+標準証明 |
| 高リスク | NIB+事業許可 |
低リスク事業は、OSSでNIB(事業識別番号)を取得すれば営業開始が可能です。ITコンサルティングや一部のサービス業などが該当します。
中リスク事業は、NIB取得後に「標準証明書(Sertifikat Standar)」の登録が必要です。これは一定の技術基準や安全基準を満たしていることを自己申告または審査により証明する制度です。
高リスク事業は、正式な事業許可(Izin Usaha)を取得する必要があり、現地視察や技術審査が伴います。医療、建設、食品製造、エネルギー関連などが該当します。
ここで重要なのは、同じ会社でも事業内容を分解するとリスク区分が異なる場合があるという点です。
成功企業は、事業内容を細分化し、リスク区分を正確に設計しています。
例えば、フィットネス事業を行う場合でも、
・施設運営
・パーソナルトレーニング
・オンライン指導
・サプリメント販売
を一括で申請するのか、分割して登録するのかで、必要ライセンスと審査負担が変わります。
設計を誤ると、高リスク扱いとなり、不要な許可取得義務を負う可能性があります。
OSS制度の刷新
OSS(Online Single Submission)は、法人設立・事業登録・ライセンス取得をオンラインで一元管理するシステムです。
オムニバス法によりOSSは「OSS-RBA(Risk-Based Approach)」へ刷新されました。これにより、NIB取得がほぼ即日可能になり、投資スピードは大幅に向上しました。
しかし、OSS上の入力内容がそのまま法的効力を持つため、KBLI選択ミスや資本金記載ミスは重大な法的リスクになります。
つまり、制度は迅速化しましたが、自己責任性が強まりました。
労働法制を軽視すると進出は失敗する
労働法(Law No.13 of 2003)と改正内容
インドネシアの労働法は労働者保護が極めて強いことで知られています。日本企業が最も誤算を抱きやすい分野がここです。
解雇には労使協議が必須
退職金(セベランスペイ)は勤続年数に応じ最大32か月分
最低賃金(UMR)は州ごとに設定
という特徴があります。
解雇には労使協議が必須
インドネシアでは、企業が一方的に解雇を決定することは原則できません。まず労働者本人との協議、合意が成立しない場合は労働裁判所の判断が必要となる場合があります。
特に勤続年数が長い社員の場合、解雇は大きな財務リスクとなります。
退職金(セベランスペイ)の重さ
退職金制度は非常に手厚く設計されています。勤続年数に応じて算定され、最長で給与の32か月分に相当する支払いが必要になるケースもあります。
例えば月給500万ルピアの社員を解雇する場合、条件次第では1億ルピア以上の支払いが発生する可能性があります。
これは日本の整理解雇とは大きく異なる水準です。
最低賃金(UMR)の地域差
最低賃金は州・県ごとに異なります。
例えば、2024年のジャカルタ特別州の最低賃金は約490万ルピアですが、西ジャワ州ブカシではそれを上回る水準です。製造業拠点が集中する地域では人件費は決して安くありません。
このため、拠点立地戦略と労務コスト計算は密接に関係します。
成功企業の労務設計戦略
成功企業は、
契約社員(PKWT)の活用設計
社会保障(BPJS)加入義務の理解
解雇リスクの事前想定
まで制度設計段階で組み込んでいます。
PKWT(有期契約)は一定条件下で活用可能であり、プロジェクト単位の採用などに適しています。ただし、契約更新回数や期間には制限があります。
BPJS(社会保障制度)は医療保険および労働保険の加入が義務であり、企業負担分も存在します。未加入は罰則対象となります。
つまり、労務は“後から考える問題”ではなく、“参入前に設計する財務モデル”なのです。
結論:制度を読める企業だけが勝つ
オムニバス法は投資環境を確かに改善しました。しかし同時に、制度はより高度化し、自己責任性が強まりました。
外資規制は「禁止かどうか」ではなく、「どう設計するか」の問題です。
労働法制は「守ればよい規則」ではなく、「財務リスクを左右する変数」です。
成功企業は、
・KBLI設計
・リスク区分設計
・ライセンス導線設計
・労務コスト設計
を統合的に考えています。
インドネシアは巨大市場です。しかし、その市場で持続的に成長できるかどうかは、制度を正しく読み替え、事業構造を設計できるかにかかっています。
市場規模ではなく、制度理解が勝敗を分ける。
それが現在のインドネシア進出の現実です。
会社設立だけでは不十分──ライセンス戦略の重要性
インドネシア進出において、「会社を設立すればすぐに営業できる」と考えるのは極めて危険です。PT PMA(外資企業)を設立することは、あくまでスタートラインに過ぎません。実際のビジネスを開始するためには、設立後に複数の行政手続きとライセンス取得が必要になります。そして、この“設立後の設計”こそが、事業スピードを左右します。
インドネシアではオンライン統合システム(OSS)を通じて各種登録を行いますが、登録=営業許可取得ではありません。事業内容や業種コード(KBLI)に応じて、追加の実体審査や現地検査が必要となるケースが多く存在します。
会社設立後に必要となる主な手続きは以下の通りです。
NIB(事業識別番号)
商業ライセンス
業種別特別許可
ハラール認証(食品関連)
これらは単独で存在するのではなく、相互に連動しています。NIBは事業の基本登録番号ですが、これだけでは営業できません。商業ライセンス(Business License)は業種によって発行条件が異なり、リスク分類(低リスク・中リスク・高リスク)によって要求書類や検査内容が変わります。
例えば、フィットネス施設運営であれば、建築用途許可や消防安全基準の適合証明が求められます。美容関連サービスであれば、地方保健当局の検査対象となります。食品関連であれば、製造・輸入・販売の各段階で異なる許可が必要です。
特に食品・美容・医療関連分野では、BPOM(国家医薬品食品監督庁)の認可取得が必要です。BPOM登録は書類審査だけでなく、成分確認、ラベル審査、場合によっては製造工場の監査も行われます。輸入食品の場合、原産国証明や製造証明書の翻訳・公証が必要となり、取得まで半年以上かかるケースも珍しくありません。
さらに、ハラール認証も重要です。インドネシアはイスラム教徒が多数派であり、2019年以降、食品・飲料・化粧品などは段階的にハラール認証取得が義務化されています。ハラール認証は宗教庁の認可プロセスを経る必要があり、単なる形式的手続きではありません。原材料のトレーサビリティ、製造工程の分離管理などが求められます。
進出コンサルが介在していない企業では、これらの手続きを後追いで行うため、ライセンス取得が遅れ、販売開始が1年後になるケースも存在します。実際に、「設立は完了したが、営業許可が揃わず賃料だけが発生する」という事態は少なくありません。ジャカルタ中心部の商業施設であれば、月額数百万円規模の賃料が発生することもあり、ライセンス遅延は即座に資金流出へと直結します。
つまり、会社設立はゴールではなく、ライセンス戦略のスタートです。事業内容を分解し、必要な許認可を逆算し、スケジュールに落とし込む。これを行わずに進出すると、事業スピードは確実に落ちます。
実際の成功事例から見る法務戦略
制度理解が事業成否を分けるという点は、実際の成功事例を見るとより明確になります。インドネシア進出支援の成功事例では、法令・税務・労務を一体設計した企業ほど、早期黒字化を実現しています。
日系フィットネス企業のケース
ある日系フィットネス企業は、進出前の段階から法務戦略を緻密に設計しました。単に「ジムを開く」のではなく、事業構造を細分化し、KBLIコードを精査しました。施設運営、物販、オンライン指導、それぞれの業種コードを取得し、将来の拡張余地を確保しました。
さらに、不動産契約前に用途地域規制を確認しました。インドネシアでは、商業用途と住宅用途の区分が明確であり、用途違反が発覚すると営業停止命令が出る可能性があります。契約前に地方自治体へ確認を取り、建物の営業適合証明を取得した上で契約を締結しました。
労務面では、雇用契約書をインドネシア語・日本語併記で整備しました。インドネシア法では契約書は原則インドネシア語が優先されますが、日本本社との整合性を確保するため、二言語併記で作成し、条文差異による誤解を防ぎました。さらに、最低賃金(UMK)やTHR支給義務を織り込んだ給与設計を行い、トレーナー評価制度を数値化しました。
税務面では、税務顧問と連携しPPN(付加価値税)設計を実施しました。インドネシアのPPNは原則11%であり、課税対象の範囲を誤ると追徴課税リスクが生じます。会費収入、物販収入、オンラインサービス収入を分類し、適切な税務処理を事前に設計しました。
この結果、設立から6か月で営業開始、1年目で黒字化を達成しました。ライセンス取得遅延や労務トラブルは発生せず、スムーズに2号店展開へと進みました。
この成功の裏側には、法令・税務・労務を一体設計する進出コンサルの存在があります。単なる会社設立代行ではなく、事業モデルを法制度に当てはめ、リスクを可視化し、時間軸で管理する専門家が関与していました。
インドネシアは「可能性の国」である一方、「制度の国」でもあります。会社設立だけで安心してしまう企業は、後工程で必ず壁に直面します。逆に、ライセンス戦略を起点に事業設計を行う企業は、スピードと安定性を同時に獲得できます。
進出を成功させる鍵は、設立前から“営業開始日”を逆算することです。必要な許認可、検査、税務登録、労務整備をすべて工程表に落とし込む。その設計力こそが、インドネシアで勝ち続ける企業の共通項なのです。
成功企業に共通する3つの特徴
インドネシア進出において成功している企業には、業種や規模を問わず、明確な共通点があります。市場規模や人口ボーナスだけに目を向ける企業と、制度設計まで踏み込む企業とでは、数年後の結果が大きく異なります。特にインドネシアのように法改正が多く、中央と地方で実務運用に差が出やすい国では、「制度理解=競争力」と言っても過言ではありません。
ここでは、実際に拠点を拡大し、長期的に黒字化している企業に共通する3つの特徴を整理します。
① 法律を「後処理」ではなく「戦略」に組み込む
設立後に問題が起きてから専門家に相談する企業は、対応コストが2倍以上になります。
インドネシア進出で最も多い失敗は、「とりあえず設立し、問題が起きたら対応する」という姿勢です。設立時に資本構成や業種コード(KBLI)、ライセンス要件を十分に検討せず、事業開始後に規制違反が判明するケースは少なくありません。
例えば、外資比率制限のある業種に100%外資で参入してしまい、後から持株比率の変更を迫られるケースや、適切な営業許可を取得せずに運営を開始し、地方政府から営業停止命令を受けるケースも実際に存在します。こうした事後対応は、追加出資、再申請費用、弁護士費用、事業停止による機会損失などが重なり、当初想定の数倍のコストが発生します。
成功企業は、投資前に
業種規制
資本規制
労働法
税務設計
をパッケージで設計しています。
つまり、会社設立は単独の手続きではなく、「事業モデルを制度に適合させる設計プロセス」として扱われます。
例えばフィットネス事業の場合でも、
施設運営を主体とするのか
フランチャイズ展開を想定するのか
サプリメント物販を組み込むのか
オンラインプラットフォームを併設するのか
によって、適用される業種コードや許認可、税務区分が変わります。
また、労働法制も戦略設計に直結します。最低賃金、残業規制、宗教大祭手当(THR)、退職金算定基準などを前提に、収益構造を設計しなければなりません。インドネシアでは退職金が最大32か月分に達するケースもあるため、採用計画と解雇リスクは事前に数値化しておく必要があります。
税務面でも同様です。法人税率、付加価値税(PPN)、源泉徴収税(PPh)などの理解が不十分なまま価格設定をすると、利益率が大幅に圧縮されます。成功企業は、事業計画段階で税務シミュレーションを行い、最適な法人構造を設計しています。
法律を「守るべき制約」として扱う企業は受動的です。
法律を「競争優位を生む設計条件」として扱う企業が成功します。
② 現地専門家ネットワークを活用している
インドネシアでは中央政府と地方政府で実務解釈が異なる場合があります。
法令自体は全国一律でも、実際の運用は地方自治体に委ねられる部分が多く存在します。これがインドネシア特有の難しさです。中央法令を正確に理解していても、地方政府の担当官が異なる解釈を示す場合があります。
例えばジャカルタとバンドンでは、
商業許可の解釈
最低賃金
地域税
が異なります。
最低賃金(UMK)は市・県単位で毎年改定されます。ジャカルタ首都圏と西ジャワ州バンドンでは水準が異なり、人件費シミュレーションが変わります。また、地域税の課税基準や行政手続きのスピードも差があります。
商業施設の営業許可や看板設置許可、建築使用許可(SLF)なども、地方ごとに運用が異なります。書類要件や審査期間が異なるため、進出スケジュールに影響します。
現地密着型のコンサルティングがなければ、
机上の理論だけでは通用しません。
成功企業は、弁護士、会計士、税理士、行政書士的役割を担うコンサルタントなど、複数の専門家ネットワークを持っています。単に法条文を知っているだけではなく、「実際に許可を通した経験」があるかどうかが重要です。
特にインドネシアでは、担当官とのコミュニケーション能力や文化理解も成功要因となります。形式的な書類提出だけではなく、事前相談や調整を行うことでスムーズな許認可取得が可能になります。
成功企業は、本社の法務部だけで判断せず、現地専門家の知見を組み合わせて意思決定を行っています。これが拠点拡大のスピード差を生みます。
③ 進出後の法改正にも対応している
インドネシアは法改正が頻繁に行われます。
成長途上国であるインドネシアは、投資促進と労働者保護のバランスを取りながら制度改正を続けています。数年前に適法だった制度設計が、現在は不十分となることも珍しくありません。
オムニバス法関連の大統領令改正
最低賃金の毎年改定
税務電子化(e-Faktur)
これらに対応できない企業は、知らないうちに違反状態になることもあります。
オムニバス法は投資環境改善を目的とした包括改正でしたが、その後も関連政令が随時更新されています。労働契約の運用、解雇補償、アウトソーシング規制などの実務が変わることがあります。
最低賃金は毎年改定されるため、給与テーブルを固定したままにしておくと違法となる可能性があります。特に複数都市に拠点を持つ企業は、各地域のUMK改定を個別に管理する必要があります。
税務分野では、電子請求書制度(e-Faktur)の導入により、付加価値税処理が電子化されています。これに対応しない場合、税務監査で指摘を受け、追徴課税や罰金が科されることもあります。
成功企業は、進出後も法改正を継続的にモニタリングし、
就業規則の更新
契約書の改訂
税務処理の見直し
ライセンス更新管理
を定期的に実施しています。
「設立したら終わり」ではありません。
「設立してからが本番」です。
結論:成功は制度理解の積み重ねで決まる
インドネシア市場は確かに成長性があります。しかし、成功を左右するのは市場規模ではなく、制度への適応力です。
① 法律を戦略に組み込む
② 現地専門家ネットワークを活用する
③ 法改正に継続対応する
この3点を徹底している企業だけが、拠点を増やし、長期的に利益を確保しています。
インドネシア進出は、文化理解やマーケティングだけでは不十分です。条文、数値、許認可導線、労務設計、税務処理――これらを一体で設計する企業が、市場の未来を掴みます。
制度を味方につけた企業だけが、インドネシアという巨大市場で持続的に成長できるのです。
インドネシア進出コンサルの本当の役割
インドネシア進出コンサルは単なる会社設立代行ではありません。
インドネシアにおける進出支援というと、「法人設立をしてくれる会社」「ビザ取得を代行してくれる窓口」といったイメージを持たれることが少なくありません。しかし、それはあくまで“入口”に過ぎません。真のインドネシア進出コンサルの役割は、企業の事業モデルを法制度に落とし込み、将来的な成長シナリオまで見据えた“構造設計”を行うことにあります。
例えば、外資企業としてインドネシアに参入する場合、多くはPT PMA(外国投資会社)を設立しますが、ここで重要なのは「会社を作ること」ではなく、「どのような資本構造で、どの業種で、どの範囲まで事業を行うのか」という設計そのものです。業種ごとの外資規制、最低投資額要件、ライセンスの種類、税務上の取り扱いなどを横断的に検討しなければ、設立後に事業制限が判明するケースもあります。
本来の役割は、
投資法設計
労務リスク管理
ライセンス取得戦略
税務設計
政策動向のモニタリング
を一気通貫で伴走することです。
まず、投資法設計です。インドネシアでは投資に関する基本法として投資法(Law No.25/2007)が存在し、外国投資家の権利義務、投資保護、優遇措置の枠組みなどが規定されています。業種によっては外資100%が可能な分野もあれば、出資比率に制限がある分野も存在します。さらに、事業規模に応じた最低投資額の要件(原則として総投資額100億ルピア以上)を満たさなければ、正式な事業ライセンスが取得できません。
進出コンサルは、単に「設立可能かどうか」を判断するのではなく、クライアントの中長期事業計画を踏まえ、最適な出資比率、資本金設計、将来的な増資や事業拡張も想定したストラクチャーを構築します。これが不十分であれば、数年後の資本再編やM&Aの際に大きなコストが発生します。
次に労務リスク管理です。インドネシアの労働法制は労働者保護色が強く、解雇手続きや退職金支払いに関する規定は非常に厳格です。最低賃金(UMK)は州ごとに異なり、毎年改定されます。社会保障制度(BPJS)への加入も義務であり、未加入の場合は行政制裁の対象になります。
進出初期段階で安易に雇用契約を締結し、就業規則を整備しないまま運用すると、後に労使紛争へ発展するリスクがあります。コンサルの役割は、雇用契約書の設計、就業規則の整備、解雇リスクの事前分析、駐在員のビザ・KITAS取得支援などを包括的に管理することにあります。
さらに、ライセンス取得戦略も極めて重要です。現在インドネシアではリスクベースアプローチ(RBA)に基づくライセンス制度が導入され、事業リスクの分類によって必要な許認可が変わります。低リスク事業であればNIB(事業識別番号)の取得のみで営業可能な場合もありますが、中〜高リスク事業では追加の営業許可や技術認証が必要になります。
事業内容とKBLIコードが一致していなければ、後の監査で問題視される可能性があります。進出コンサルは、単なる申請代行ではなく、事業モデルを精査し、将来の事業展開まで見据えたKBLI選定とライセンス戦略を構築します。
税務設計も見逃せません。法人税率は原則22%ですが、特定条件を満たせば優遇税制の適用が可能な場合があります。移転価格税制や配当課税、付加価値税(VAT)など、国際取引を前提とした設計が不可欠です。日本本社との取引価格設定が適正でなければ、税務調査で追徴課税を受けるリスクもあります。
そして、政策動向のモニタリング。インドネシアでは大統領令や省令の改正が頻繁に行われます。オムニバス法施行後も関連規則の改正が続いており、最新情報を把握していなければ、知らないうちに制度変更の影響を受ける可能性があります。
こうした横断的な視点で事業を支えることこそが、真のインドネシア進出コンサルの役割です。
公式サイト
https://indonesia-consulting.jp/
では、法律・労務・税務を横断した実務支援体制を整えています。
PT Japan Fitness Indonesia
PT Japan Fitness Indonesiaは、インドネシア進出支援に特化し、単なる設立代行ではなく、戦略設計から実行支援まで一気通貫で伴走する体制を構築しています。
外資規制の確認、投資スキーム設計、労務体制構築、税務アドバイザリー、ライセンス取得、ビザ対応まで包括的に支援。現地専門家ネットワークを活用し、日本企業が直面しやすいリスクを事前に可視化し、回避策を提示します。
まとめ:成功の差は「法律を理解しているかどうか」
インドネシアは魅力的な市場です。
若年人口の多さ、内需拡大、デジタル化の進展など、成長機会は確かに存在します。しかし、それと同時に、法制度を理解せずに参入した企業が撤退を余儀なくされる例も現実にあります。
しかし、
投資法(Law No.25/2007)
労働法(Law No.13/2003)
オムニバス法(Law No.11/2020)
リスクベースライセンス制度
を理解せずに進出することは、極めて危険です。
投資法は外資の枠組みを規定し、労働法は雇用関係を縛り、オムニバス法は投資促進と規制緩和を進める一方で、新たな制度変更を生み出しました。リスクベースライセンス制度は、事業分類と許認可取得を密接に結びつけています。
これらを断片的に理解するのではなく、統合的に捉えることが重要です。
成功企業は、
法律を「制約」ではなく「戦略資産」として活用しています。
例えば、税制優遇の適用を前提とした工場設立計画、外資100%可能な業種を活用した事業展開、労務制度を理解した上での組織設計など、法制度を味方につけています。
逆に、法律を障害と捉え、最低限の対応だけで済ませようとすると、後から高い代償を払うことになります。
インドネシア進出を本気で成功させたい企業は、
まずは法制度設計から。
市場調査よりも前に、事業構造の法的妥当性を確認すること。それが長期的な成功への近道です。
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