経済成長の次に来る波を読む──インドネシア×フィットネスの未来予測
高成長の「次」を読むことが、事業の明暗を分ける
新興国で事業を考える際、多くの人がまず注目するのは「今の成長率」です。GDPがどれくらい伸びているのか、市場規模は拡大しているのか、人口ボーナスはまだ続くのか。こうした指標は、投資判断や進出判断において確かに重要な材料になります。しかし、それだけを見て意思決定をすると、長期的には大きな差が生まれます。
本当に事業の明暗を分けるのは、「今が伸びているかどうか」ではなく、高成長の次に何が起こるのかを読めているかどうかです。成長のピークを過ぎてから動くのか、それとも次のフェーズを先回りして仕込めるのか。この差は、数年後に取り返しのつかない差となって表れます。
インドネシアはすでに、
人口約2.8億人という巨大な母数
中長期でGDP成長率5%前後を維持する安定性
ASEAN最大の内需市場という圧倒的なスケール
といった「経済成長の物語」は、国内外で広く共有されています。だからこそ、多くの企業がインドネシアを「今後も伸び続ける市場」として捉え、消費財、IT、金融、インフラなど、さまざまな分野で参入を進めてきました。
しかし、ここで重要なのは、この物語はすでに“現在進行形の常識”になっているという点です。つまり、「インドネシアは成長国である」という認識そのものは、もはや差別化要因にはなりません。事業家・企業が今見るべきなのは、その先、すなわち経済成長が一定水準に達した後に社会がどのように変質していくのかというフェーズです。
成長は永遠には続きません。むしろ、成長が進むほど、新しい課題や歪みが生まれます。その歪みこそが、次の巨大市場を生む源泉になります。インドネシアにおいても、今まさにその転換点が近づきつつあるのです。
経済成長の次に必ず起きる「3つの変化」
多くの国の成長プロセスを俯瞰すると、経済成長の後には、ほぼ例外なく共通する変化が現れます。これは文化や宗教、政治体制が違っても、驚くほど似たパターンをたどります。インドネシアも、まさにこの流れの中にあります。
第一に起きるのが、都市化の加速です。経済成長は雇用と機会を都市部に集中させ、人の流れを地方から都市へと引き寄せます。インドネシアではすでに都市人口比率が55%を超えており、2035年には65%前後まで上昇すると予測されています。これは単に「都市に人が増える」という話ではありません。生活様式そのものが、農村型から都市型へと不可逆的に変化することを意味します。
都市化が進むと、人々の働き方は肉体労働中心からデスクワーク中心へと移行します。移動は徒歩や自転車から、自動車やバイク、公共交通へと変わり、日常生活の中で自然に体を動かす機会は大幅に減少します。都市は便利である一方、身体活動量が構造的に少なくなる環境でもあるのです。
第二に起きるのが、ライフスタイルの固定化です。経済成長初期には、人々の生活はまだ流動的で、試行錯誤の余地があります。しかし、一定の所得水準に達すると、食事、働き方、移動手段、余暇の過ごし方が「習慣」として固定されていきます。この段階に入ると、人々は意識的に選択しているつもりでも、実際には無意識のルーティンに支配されるようになります。
例えば、忙しさを理由に外食やデリバリーが増え、甘い飲料を日常的に摂取し、運動は「時間があればやるもの」へと後回しにされる。こうした小さな選択の積み重ねが、数年後に健康状態として顕在化します。重要なのは、この変化が本人の自覚なしに進行する点です。
第三に現れるのが、社会コストの顕在化です。生活習慣病の増加は、医療費の増大という形で国家財政に影響を与えます。同時に、慢性的な不調を抱える労働人口が増えることで、労働生産性の低下や欠勤率の上昇といった問題も表面化します。企業にとっては、人材の定着率やパフォーマンス低下という形で、直接的な経営課題になります。
これら三つの変化が重なるタイミングで、初めて「健康」というテーマは、個人の自己責任の問題から、社会全体、さらには経済の持続性を左右する問題へと格上げされます。これは日本、韓国、中国、欧米諸国がすでに経験してきた道であり、インドネシアも例外ではありません。
企業が先に動き始める「予防市場」という次の波
このフェーズにおいて、最初に動き始めるのは、実は個人ではありません。先に動くのは企業です。なぜなら、健康問題が最も早く、かつ明確に影響を及ぼすのが「企業活動」だからです。
すでに欧米や日本では、福利厚生としてフィットネスを導入することは特別なことではなくなっています。オフィスにジムを併設したり、外部のフィットネス施設と法人契約を結んだりすることで、従業員が運動しやすい環境を整える動きが一般化しています。これは単なる“従業員サービス”ではなく、生産性向上や医療コスト削減を目的とした経営判断です。
また、健康経営を評価指標に組み込む動きも加速しています。従業員の健康状態や取り組みを可視化し、企業価値や投資判断の一要素として評価する流れは、もはや一過性のトレンドではありません。さらに、保険料と健康データを連動させる仕組みも広がり、健康であること自体が経済的インセンティブを持つ構造が作られています。
こうした動きは、インドネシアでもすでに兆しを見せています。外資系企業や大手ローカル企業を中心に、「従業員の健康=企業価値」という考え方が少しずつ浸透し始めています。これは、医療費の抑制や生産性向上といった短期的な理由だけでなく、優秀な人材を惹きつけ、長く活躍してもらうための戦略でもあります。
重要なのは、この企業主導の動きが、やがて個人市場へと波及していく点です。企業が健康への投資を始めると、人々の意識は徐々に変わります。「会社が健康を重視している」「周囲が運動を始めている」という環境が、個人の行動変容を後押しします。その結果、個人向けフィットネス需要が本格的に立ち上がります。
つまり、今インドネシアで起きている企業の健康投資の芽は、将来的な個人向けフィットネス市場拡大の前兆でもあります。高成長の「今」だけを見るのではなく、その次に来る社会課題と市場を読み解くこと。それこそが、インドネシアという国で事業を行う上で、決定的な差を生む視点なのです。
生成AI時代が、企業の投資判断を変える
生成AIの進化によって、ホワイトカラー業務の多くが効率化・削減されていくことは、もはや「未来の話」ではなく、現時点で企業経営の前提条件になりつつあります。社内の問い合わせ対応、議事録作成、資料の下書き、データ集計、簡易な分析、レポート作成、広告運用の一次調整、採用スクリーニング、カスタマーサポートのテンプレ応答など、これまで“人間が時間を使うこと”によって成立していた領域は、徐々に「AIが支える標準機能」へと組み替えられています。つまり企業は、同じ成果をより少人数で出せる構造に向かっています。
この変化は、人件費の削減や効率化という表面的な話に留まりません。企業の投資判断そのもの、つまり「どこに資本を投下し、何を競争優位にするか」を根本から変えていきます。これまでは、優秀なホワイトカラーを採用し、情報処理や管理能力を組織の強みとして積み上げることが、成長の王道でした。しかし生成AIが普及すると、情報処理能力や文章生成能力は「誰でも一定レベルで使える」ものになり、希少性が低下します。すると企業が競う領域は、情報処理の速度ではなく、「人間がどれだけ持続的に成果を出し続けられるか」という方向へ移ります。
将来、事務・管理・分析といった職種の多くが縮小される中で、企業が最も恐れるのは「人材の非稼働」です。ここでいう非稼働とは、単に欠勤することだけではありません。出勤していても集中力が続かない、疲労が慢性化して判断が鈍る、ストレスでメンタルが崩れやすい、体調不良でコミュニケーションが荒れる、こうした「見えにくい非稼働」が組織の生産性を蝕みます。AIが業務を効率化すればするほど、ひとり当たりのアウトプット期待値は上がり、逆に不調による損失は相対的に大きくなります。少人数で回している組織ほど、一人の不調が全体に波及し、プロジェクト全体が止まるリスクを抱えます。
だからこそ、企業は
働き続けられる身体
集中力と持続力
メンタルとフィジカルの安定
といった、人間側のパフォーマンス維持に投資するようになります。
これは、福利厚生の話でも、社員満足度の話でもありません。企業にとって、人的資本の稼働率は「売上を生む機械の稼働率」と同じくらい重要な経営指標になっていきます。生成AIによって業務が最適化されるほど、人間が担う領域は「意思決定」「創造」「対人関係」「信頼形成」「現場での実行」に寄っていきます。そしてこれらは、体調が悪い状態、疲労が溜まった状態、メンタルが乱れている状態では成立しにくい領域です。AIが補助できるところが増えるほど、むしろ「人間に残される仕事」は、心身の安定を必要とする仕事になります。
この文脈において、フィットネスは
「コスト」ではなく
人的資本への投資
として位置づけられていきます。
ここで重要なのは、フィットネスの価値を「運動すること」そのものに置かないことです。フィットネスは、睡眠の質を上げ、ストレス耐性を高め、血流を改善し、集中力の持続時間を伸ばし、自己効力感を育てる手段です。これは、そのまま企業の生産性に直結します。特に中間管理職や意思決定者層にとって、体調の安定は「能力」そのものです。どれだけ頭が良くても、体調が崩れれば判断は鈍ります。どれだけ経験があっても、睡眠不足が続けば感情のコントロールが難しくなります。企業はこの現実に、よりシビアになっていきます。
生成AIは、人間の代わりに仕事をする存在ではなく、「人間の成果基準を引き上げる存在」でもあります。だからこそ企業は、AI投資と同じくらい、あるいはそれ以上に、人間側のコンディション維持へと投資するようになります。フィットネスは、まさにその投資先としての合理性を持つのです。
フィットネスは“景気循環に強い産業”へ変わる
もうひとつ重要なのは、フィットネス事業の性質変化です。かつてフィットネスは、景気が悪くなると真っ先に削られる「嗜好性サービス」でした。外食、旅行、ファッションと同じように、余裕があるときにだけ選ばれる“贅沢”として扱われやすかった。企業も個人も、節約局面では「ジム代」を削ることが合理的に見えていました。
しかし今後は、この構造が徐々に変わります。なぜなら、健康が「贅沢」ではなく「稼働条件」へと変わっていくからです。AI時代において、働く人の価値は「処理する能力」から「出し続ける能力」へ移ります。すると健康は、もはや趣味ではなく、稼働するための基盤になります。基盤への支出は、削りにくい。これは家賃や通信費のように、「ないと生活や仕事が成立しない」支出へ近づいていきます。
しかし今後は、
健康維持
生産性確保
医療費抑制
という機能が重視され、景気に左右されにくい産業へと変わっていきます。
ここでポイントになるのは、フィットネスが“医療の前段階”として位置づけられることです。医療費の増大が問題になればなるほど、政府も企業も「発症してから対処するより、発症しない人を増やす」方向へ資源を配分します。個人にとっても、病院に通う時間、薬を飲む生活、体調不良による仕事の停滞は、人生のコストとして非常に重い。だからこそ「予防」の価値が上がります。
また企業側の視点で見れば、採用コストが上がり、育成コストも増大する中で、社員が体調不良で離脱する損失は以前より重くなっています。景気が悪い局面でも、安易に人を増やせない。だからこそ、今いる人材を健康に保ち、稼働率を維持することが、リスクヘッジとして合理的になります。景気が悪いほど、実は健康投資の必要性が上がる局面すら起こり得ます。
これは、事業ポートフォリオを考える企業にとって、非常に魅力的な特徴です。景気循環に左右されやすい事業だけを抱えると、経営は常に波に翻弄されます。しかしフィットネスが「景気が良いと伸びるサービス」から「社会機能として必要なサービス」へ変わるなら、企業にとっては安定性の高い収益源になり得ます。特に会員制モデルや継続課金モデルは、一定のロイヤルティが築ければ、景気変動に対して強い耐性を持ちます。
そして、AI時代においては「オンラインで代替できる部分」と「対面でしか成立しない部分」が明確に分かれます。フィットネスは後者の比率が高い。フォームの微調整、身体の癖の把握、対話によるモチベーション設計、継続支援。こうした領域は、動画やアプリで補助できても完全には代替できません。つまりフィットネスは、AIが進化しても価値の中心が残り続ける産業であり、それが結果として景気循環への耐性にもつながっていきます。
なぜインドネシアでこの波が大きくなるのか
この「次の波」が、特に大きくなる国があります。
それが インドネシア です。
理由は明確です。
若年人口が多く、労働市場の影響が大きい
都市部の成長スピードが速い
これまで「健康」が社会課題として扱われてこなかった
つまり、伸び代が非常に大きい。
インドネシアの強みは「若さ」です。しかし若さは、放置すれば健康問題が表面化する前の“静かな猶予期間”でもあります。今の段階で健康行動を社会に組み込めるかどうかで、10年後、20年後の医療費負担と労働生産性は大きく変わります。つまりインドネシアにとってフィットネスは、単なる民間サービスではなく、国家の成長を支える基盤になり得ます。
都市部の成長スピードが速いという点も重要です。都市化が進むと、人々は便利さを手に入れる代わりに、歩く時間や身体活動量を失います。デリバリーや車移動、デスクワーク中心の生活は、生活習慣病リスクを確実に上げます。インドネシアはまさにこの局面に入りつつあり、健康課題が顕在化する前に予防サービスが求められるタイミングに差し掛かっています。
さらに「これまで健康が社会課題として扱われてこなかった」という点は、裏を返せば政策・投資・事業の伸び代が大きいことを意味します。日本や欧米ではすでに健康産業が成熟し、競争も激しく、差別化が難しい。一方でインドネシアは、健康にお金を使う文化がこれから広がる段階であり、良質なサービスを提供する事業者が“基準”を作ることができます。
日本や欧米ではすでに成熟しきった健康・フィットネス市場が、
インドネシアではこれから「社会的に必要なもの」として立ち上がろうとしています。
このフェーズの市場には、特徴があります。単なる価格競争ではなく、「何が正しい体験か」「何が信頼できる事業者か」を決める戦いになることです。ここで先に信頼を獲得できた事業は、口コミや紹介、法人契約などで強いポジションを取りやすくなります。つまり、波が大きいだけでなく、早期参入者にとってのリターンも大きい市場だと言えるでしょう。
フィットネス事業は「未来の社会要請」を先取りする
ここで重要なのは、
フィットネス事業を
「今の需要に応えるビジネス」
として見るのではなく、
未来の社会要請を先取りする事業
として捉えることです。
多くのビジネスは、目の前のニーズに応えることから始まります。しかし、長期的に強い事業は「社会が必ず向かう方向」を先に見て、そのポジションを取ることで成立します。フィットネスはまさにそれが可能な産業です。なぜなら、健康課題は“起きてから騒がれる”のではなく、“必ず起きることが分かっている未来”だからです。都市化が進み、所得が上がり、生活が便利になるほど、運動不足は増え、生活習慣病は増える。これは国が違っても変わりません。
・健康課題が顕在化する前
・制度や補助が整う前
・競争が激化する前
この段階でポジションを取れるかどうかが、10年後の差になります。
健康課題が顕在化してから参入する事業者は、すでに多くの競合が存在し、顧客獲得コストも高い状態で戦わなければなりません。制度が整った後に参入すれば、ルールの枠組みの中で差別化が難しくなり、価格競争に巻き込まれます。競争が激化した後に参入すれば、ブランド構築にも時間と資本が必要になります。
逆に、早い段階でポジションを取った事業者は、市場の“当たり前”を作る側に回れます。顧客の基準を作り、信頼の蓄積を先に進め、法人や行政との連携も含めて、社会的なインフラに近い役割を獲得していける可能性があります。
生成AI時代において企業の投資判断が変わるのは、テクノロジーが人間を置き換えるからではありません。テクノロジーによって、人間の価値の定義が変わるからです。そしてその変化の先に、健康というテーマが必ず浮上します。
フィットネス事業は、その未来を先取りすることができる数少ない事業の一つです。
インドネシアという若い国で、この波が大きくなるのは必然です。
だからこそ今、この段階でフィットネス事業を持つことは、「流行に乗ること」ではなく、未来の社会要請に先回りして“取るべきポジションを取ること”だと言えるでしょう。
不安定な時代に、最も合理的な選択肢のひとつ
生成AIの進化、雇用構造の急速な変化、そして世界的な経済の不確実性。こうした要素が同時に進行する現代において、企業を取り巻く環境はこれまでになく流動的になっています。技術革新のスピードは加速し、昨日まで有効だったビジネスモデルが、明日には通用しなくなる可能性すらあります。
このような時代において、企業が考えるべき問いは大きく変わりつつあります。かつては「最も成長する事業は何か」「どの市場が最も拡大するか」が中心的なテーマでした。しかし今、より重要になっているのは、「どの事業が最も長く必要とされ続けるのか」という視点です。短期的な成長率や話題性よりも、社会構造の変化に耐え、時代が揺れても価値を失わない事業を選び取れるかどうかが、企業の安定性を大きく左右します。
生成AIの進化は、多くの産業にとって脅威であると同時に、価値の再定義を迫る存在でもあります。効率化や自動化によって利益を生み出してきた事業ほど、AIによる代替の影響を受けやすくなります。一方で、人の生活そのものに深く根ざし、代替が難しい価値を提供する事業は、相対的にその重要性を高めていきます。
インドネシアにおけるフィットネス事業は、まさにこの文脈に位置づけられる存在です。単なる娯楽や流行のサービスではなく、人の身体と健康という根源的なテーマに向き合う事業であり、社会構造の変化と強く結びついています。だからこそ、不安定な時代においても合理性を持ち続ける選択肢となり得るのです。
生成AIの進化は、企業活動における「人的価値」の意味を大きく変えています。多くの知的作業が自動化される中で、人間に求められる役割は、単なる作業遂行から、より本質的な価値提供へと移行しています。その中核にあるのが、「身体」「健康」「継続的なパフォーマンス」です。
インドネシアにおけるフィットネス事業は、人口構造と強く結びついています。インドネシアは若年層が厚く、労働人口が今後も長期間にわたって維持される国です。しかし同時に、都市化と生活習慣の変化により、運動不足や生活習慣病といった健康課題が確実に増加していきます。これは、経済成長の裏側で必ず表面化する構造的な問題です。
経済成長の初期段階では、人々の関心は所得の向上や消費の拡大に向かいます。しかし、一定の水準に達すると、次に意識されるのは「健康であり続けられるか」「今の生活を長く維持できるか」という問いです。これは、どの国でも共通して見られる現象であり、インドネシアも例外ではありません。むしろ、成長スピードが速い分、その転換点は急激に訪れる可能性があります。
この「経済成長の次の波」に位置づけられるのが、健康と予防の領域です。医療だけでは対応しきれない課題に対して、日常生活の中で継続的に介入できる仕組みが求められます。フィットネス事業は、その中心的な役割を担う存在です。病気になってから治療するのではなく、そもそも病気になりにくい身体をつくる。この考え方は、個人にとっても社会にとっても合理的であり、長期的な需要を生み出します。
さらに、AI時代においては「人的資本投資」という概念がこれまで以上に重要になります。人的資本とは、単なるスキルや知識だけでなく、健康、体力、集中力、持続力といった要素を含む概念です。どれだけ高度な技術が導入されても、それを使いこなすのは人間であり、健康でなければ生産性は維持できません。フィットネス事業は、この人的資本投資の基盤を支える存在として、企業や社会からの必要性を高めていきます。
インドネシアにおけるフィットネス事業が合理的な選択肢である理由は、単に市場規模が拡大する可能性があるからではありません。人口構造、経済成長の段階、AI時代の人的資本投資という三つの要素が、同時に同じ方向を向いている点にあります。これらが整合する産業は、実はそれほど多くありません。
多くの新規事業は、技術トレンドや一時的な需要に依存しています。その結果、環境が変わった瞬間に価値を失ってしまうリスクを抱えます。一方で、フィットネス事業は、人が生きていく限り消えることのない「健康」というテーマを扱っています。需要の形は変わっても、需要そのものがなくなることはありません。
また、フィットネス事業は、規模や形態を柔軟に変えられるという特徴も持っています。大規模展開だけが正解ではなく、少人数制や専門特化型など、時代や市場に合わせて形を変えながら継続することが可能です。これは、不確実性の高い時代において非常に大きな強みです。
不安定な時代において、企業が取るべき戦略は、「当たるかどうかわからない大きな賭け」をすることではありません。むしろ、「外れにくい選択肢」を複数持ち、長期的に価値を積み上げていくことです。インドネシア×フィットネスという組み合わせは、その条件を満たす数少ない選択肢のひとつだと言えるでしょう。
経済成長の“次”を読むことは、決して簡単な作業ではありません。しかし、どの国でも共通しているのは、成長の先に必ず「質」の問題が浮上するという点です。量的な拡大から、生活の質、働き方の質、健康の質へと関心が移行していきます。そのときに必要とされる事業は、流行や技術ではなく、人の生活そのものに根ざしたものです。
インドネシアにおいて、その答えのひとつがフィットネス事業です。生成AI時代という不確実性の高い環境の中で、最も合理的な選択肢のひとつとして、静かに、しかし確実に価値を高めていく事業だと言えるでしょう。

