円安・人材不足時代の出口戦略──インドネシア進出は本当にリスクヘッジになるのか?
「国内で踏ん張る」だけが正解なのか

円安が常態化し、輸入コストは上昇。
採用は難航し、国内市場は縮小傾向。
日本企業、とりわけ中堅企業にとって、
人口減少
人材不足
円安
成長鈍化
は、もはや「努力で乗り越える」問題ではなく、構造的課題です。
営業努力を強化すれば解決する問題でしょうか。
コスト削減を徹底すれば乗り越えられるのでしょうか。
答えは、残念ながら単純ではありません。
人口が減るということは、顧客数が減るということです。
労働人口が減るということは、供給能力が制限されるということです。
円安が続くということは、仕入れや設備投資コストが高止まりするということです。
これらは企業の努力だけでは変えられない、マクロ構造の問題です。
その中で、インドネシア進出を“逃げ場”として検討する企業が増えています。
国内市場に依存し続けるのではなく、第二の収益軸を持つ。
為替や景気の影響を分散する。
人口増加国に拠点を持つことで、長期的な成長機会を確保する。
こうした発想は合理的に見えます。
しかしKakemochiのリスク分析記事でも指摘されている通り、
インドネシア進出自体にも明確なリスクが存在します。
市場が成長しているからといって、無条件に成功できるわけではありません。
法制度を誤解し、許認可を軽視し、労働規制を理解しないまま進出すれば、
むしろ国内よりも大きな損失を被る可能性があります。
本記事では、法律面に特化しながら、
インドネシア進出が本当にリスクヘッジになるのかを検証します。
まず前提として理解すべきことがあります。
「国内で踏ん張る」という選択肢は、決して間違いではありません。
日本は法制度が安定し、インフラが整い、消費者の購買力も依然として高い成熟市場です。
しかし、国内だけで持続的な成長を描ける企業は限られます。
売上が横ばい、もしくは微減。
人件費は上昇。
原材料コストも上昇。
この構造では、利益率は圧迫されます。
仮に国内売上の100%を日本に依存している企業があるとします。
その企業は、国内景気後退や政策変更の影響をダイレクトに受けます。
一方で、売上の30%を海外市場で確保している企業であれば、
国内不況の影響は相対的に緩和されます。
これは金融投資におけるポートフォリオ理論と同じです。
リスクを分散することで、経営の安定性を高める。
では、インドネシアはその分散先として合理的でしょうか。
インドネシアは約2.7億人の人口を抱え、平均年齢は約30歳前後。
中間層は拡大傾向にあり、GDP成長率は概ね5%前後を維持しています。
しかし重要なのは、人口構造だけではありません。
制度改革の方向性です。
2020年に施行された雇用創出法(Law No.11 of 2020)は、
投資規制緩和と許認可簡素化を目的とした歴史的改革法です。
従来のネガティブリスト(DNI)は廃止され、
ポジティブリスト制度へ移行。
多くの業種で外資100%出資が可能となりました。
投資法(Law No.25 of 2007)は、
利益送金の自由や国有化時の補償規定を明確化し、
外資企業の法的安定性を担保しています。
会社法(Law No.40 of 2007)は、
株主構成、取締役責任、資本金規定などを定め、
法人運営の透明性を確保しています。
制度が整備されているという事実は、
リスクヘッジ戦略において重要です。
ただし、制度が整備されていることと、
制度を正しく理解していることは別問題です。
インドネシアで外資法人(PT PMA)を設立する場合、
原則として最低投資計画総額100億ルピアが求められます。
払込資本金はその25%以上が一般的です。
この数値を誤解し、資本金だけを用意して進出しようとした結果、
申請が却下される事例もあります。
さらに、OSS(Online Single Submission)による事業登録、
NIB(事業基本番号)の取得、
業種別営業許可の申請が必要です。
労働法(Law No.13 of 2003)に基づく雇用契約、
最低賃金、退職金規定の理解も不可欠です。
駐在員を派遣する場合は、就労許可とビザ取得が必要です。
つまり、インドネシア進出は、
単なる市場拡大ではなく、法務設計プロジェクトです。
進出をリスクヘッジとするには、
リスクを制御できる設計が前提になります。
また、M&Aという手段もあります。
既存企業を買収することで、市場参入を迅速化できます。
しかしインドネシアM&Aでは、
公証人手続き
法務人権省(MOLHR)登録
競争法(KPPU)届出
労働債務の承継
といった日本とは異なる法制度対応が必要です。
価格交渉だけに注目すると、
買収後に予期せぬ債務や罰金が発生するリスクがあります。
ここでも重要なのは、制度理解です。
では結論として、
インドネシア進出は本当にリスクヘッジになるのでしょうか。
答えは、「設計次第」です。
法制度を理解し、
外資規制を確認し、
将来の資本構成変更まで想定したうえで進出するのであれば、
インドネシア拠点は第二の足となり得ます。
しかし、国内の停滞から逃れるためだけに進出するのであれば、
それは単なるリスクの移転に過ぎません。
「国内で踏ん張る」か「海外に出る」か、
二者択一の問題ではありません。
重要なのは、
国内依存度をどう下げるかという構造設計です。
一本足で立ち続ける企業は、不安定です。
二本目の足を持つ企業は、揺れに強くなります。
インドネシア進出は、攻めの拡大戦略ではなく、
守りの分散戦略として検討すべきです。
国内で踏ん張ることは尊い選択です。
しかし、それだけが正解とは限りません。
10年後、
国内市場がさらに縮小していたとき、
「あの時、選択肢を広げておけばよかった」
そう後悔しないために。
必要なのは、感情ではなく、
法制度に基づいた冷静な戦略設計です。
インドネシア進出のリスクとは何か
インドネシアは人口約2.7億人、GDP成長率約5%前後を維持する成長市場であり、日本企業にとって魅力的な分散先です。しかし、魅力とリスクは常に表裏一体です。
実際、インドネシア進出で失敗する企業の多くは、「市場リスク」ではなく「制度リスク」を軽視した結果、撤退や事業縮小に追い込まれています。
重要なのは、リスクの“存在”ではなく、“構造”を理解することです。
以下では、進出に際して必ず押さえるべき主要リスクを整理します。
① 外資規制リスク
インドネシアでは
**投資法(Law No.25 of 2007)**に基づき、外資規制が定められています。
現在はポジティブリスト制度により、
小売業
建設業
医療
教育
など、業種ごとの出資制限が存在。
事業分類コード(KBLI)を誤ると、営業停止や是正命令のリスク。
かつてのネガティブリスト(DNI)制度からポジティブリスト制度へ移行したことで、「原則開放、例外規制」という建て付けになりました。しかし、これは「何でも自由」という意味ではありません。
ポジティブリスト制度では、
・外資100%可能業種
・条件付き業種(出資比率制限あり)
・MSME専用業種
といった区分が存在します。
例えば、小売業の一部では一定規模以下の場合に外資制限が課されるケースがあります。建設業では資本金区分やライセンス区分によって外資比率に影響が出ることがあります。医療・教育分野では、原則として厳格な許認可制度が適用されます。
ここで最も多い誤りが、KBLI(事業分類コード)の誤認です。
KBLIは日本の業種コードよりも細分化されており、似た名称でも規制内容が異なります。
例えば、
・飲食店経営
・食品製造
・食品流通
は、それぞれ異なるKBLIに該当します。
誤ったKBLIでOSS登録を行うと、
・外資規制違反
・事業許可無効
・行政指導
・是正命令
・最悪の場合、営業停止
といったリスクが発生します。
実際、進出後にKBLIの誤りが発覚し、株主構成の再設計や資本再編を余儀なくされたケースも存在します。
外資規制リスクは「禁止」ではなく「設計」の問題です。
事前の法的確認を怠ると、参入後に大きな修正コストが発生します。
② 会社法上の形式リスク
**会社法(Law No.40 of 2007)**により、
株式譲渡は公証人手続き必須
株主総会決議義務
法務人権省(MOLHR)登録
日本の私的契約完結型とは異なります。
インドネシアの会社法は、形式要件を非常に重視する構造です。
日本では、株式譲渡契約を締結すれば当事者間では効力が発生します。しかしインドネシアでは、公証人による議事録作成、定款変更手続き、法務人権省登録まで完了しなければ、対外的効力が確定しません。
この違いを理解していない企業は、以下のような問題に直面します。
・契約締結済みだが法的効力未確定
・株主名簿更新が未完了
・行政登録未反映
・銀行口座変更不可
また、取締役変更や増資の際にも公証手続きが必要です。手続きの遅延は、事業判断の遅延に直結します。
形式リスクを軽視すると、
「契約は終わっているはずなのに、行政上は未完了」
という状態が発生します。
これは金融機関取引や大型契約締結の際に致命的となります。
③ 競争法リスク
競争法(Law No.5 of 1999)
一定規模以上のM&Aでは
KPPUへの30日以内届出義務。
JETRO資料でも重要論点として明示。
インドネシアには競争法が存在し、大規模なM&Aや企業結合に対しては事後届出義務があります。
一定規模以上の取引では、
KPPU(インドネシア競争委員会)への届出が必要です。
届出期限は取引完了後30日以内。
これを怠ると、
・過料
・行政制裁
・取引是正命令
のリスクがあります。
特に、
・売上規模の大きい企業買収
・同業他社の統合
・市場シェア拡大を伴う取引
では慎重な判断が必要です。
競争法は軽視されがちですが、買収後に問題が顕在化すると、事業戦略全体に影響を及ぼします。
④ 労務リスク
労働法(Law No.13 of 2003)
解雇時退職金:最大32ヶ月分
最低賃金(ジャカルタ月500万ルピア超)
労働紛争多発リスク
インドネシアの労働法は、労働者保護色が強い制度として知られています。
解雇には労使協議が必要であり、勤続年数に応じた退職金支払い義務があります。場合によっては最大32ヶ月分相当の支払いが発生します。
最低賃金(UMR)は州ごとに設定され、ジャカルタ特別州では月500万ルピア超の水準となっています。
労務リスクの具体例としては、
・契約社員(PKWT)の誤用
・BPJS(社会保障)未加入
・解雇手続き不備
・宗教行事対応の不備
などが挙げられます。
労働紛争は裁判に発展するケースもあり、時間とコストがかかります。
人材確保を目的に進出した企業が、労務管理を誤った結果、想定以上のコスト負担に直面することもあります。
リスクは「避ける」ものではなく「設計する」もの
インドネシア進出のリスクは確かに存在します。
しかし、重要なのはリスクの有無ではありません。
・外資規制は事前設計で回避可能
・会社法の形式要件は理解すれば対応可能
・競争法は届出管理でコントロール可能
・労務リスクは制度理解で予防可能
問題は、「知らずに進出すること」です。
制度理解なしの進出は、構造的リスクを抱えたまま走ることになります。
一方で、制度を前提とした設計ができれば、インドネシアは持続的な成長市場として機能します。
では、なぜそれでもインドネシアなのか
ここまで制度の厳格さ、法務リスク、外資規制、労働法の強さなどを述べてきました。
「そこまで制度理解が必要なら、他国のほうが楽なのではないか」と感じる経営者もいるかもしれません。
しかし、それでもなお、多くの日本企業がインドネシアを選び続けています。
その理由は明確です。
制度を理解すれば、リターンが大きい市場だからです。
単なる成長市場ではなく、「人口構造」「経済構造」「デジタル変革」「地政学的ポジション」という複数の要素が重なっている点が本質です。
以下、その構造を分解します。
① 人口動態の優位性
人口約2.7億人
インドネシアは東南アジア最大の人口を抱え、世界でも上位に位置する人口大国です。
ASEAN全体の人口約6億人のうち、約4割をインドネシアが占めます。
これは単に「市場が大きい」という話ではありません。
国内市場だけでスケールできる構造を持つ国、という意味です。
日本企業にとって、輸出依存型モデルではなく「現地内需完結型モデル」が成立する数少ない国の一つです。
平均年齢約30歳
平均年齢は約30歳前後。
日本は約48歳前後とされており、人口構造は対照的です。
若年層が多いということは、
・消費意欲が高い
・デジタル受容性が高い
・労働供給が安定
・住宅需要が拡大
・教育市場が伸びる
という複数の経済効果を生みます。
中間層拡大
特に注目すべきは中間層の拡大です。
可処分所得が上昇し、単なる「低価格市場」ではなく、「質を求める市場」に移行しています。
例えば、
・日系食品ブランド
・日本式フィットネス
・美容・ヘルスケア
・教育サービス
・日本型小売
などは「安心・品質」のブランド力で受け入れられています。
人口ボーナス期にある国は、内需主導で10年単位の成長が期待できます。
これは構造的な優位性です。
② 成長率の安定
GDP成長率約5%前後。
インドネシアは長期的に約5%前後の成長率を維持してきました。
コロナ禍を除けば、比較的安定した成長軌道を描いています。
日本が1%未満の成長にとどまる中、5%成長は複利的に見ると極めて大きな差を生みます。
5%成長が10年続けば、市場規模は約1.6倍になります。
この差は企業価値に直結します。
内需主導型経済
インドネシア経済は資源依存だけではありません。
消費がGDPの過半を占める内需主導型経済です。
つまり、外部ショックに対して比較的耐性があります。
資源価格変動や国際情勢に影響は受けますが、国内消費が一定の安定弁として機能します。
デジタル経済の爆発的拡大
GoTo
Tokopedia
インドネシアではデジタル経済が急拡大しています。
GoTo(Gojek×Tokopedia統合)は、
配車・EC・決済・金融を統合した巨大プラットフォームです。
Tokopediaは国内最大級のEC基盤を構築しました。
さらに、BukalapakやTravelokaなども急成長しています。
スマートフォン普及率の高さ
若年人口が多いことから、スマートフォンを前提とした消費行動が一般化しています。
・モバイル決済
・オンラインショッピング
・SNSマーケティング
・ライブコマース
など、日本以上にデジタルが生活に浸透しています。
日本企業にとって、
オフライン中心モデルだけでなく、オンライン拡張戦略が取りやすい環境です。
ASEANの中心という地政学的ポジション
インドネシアはASEAN最大の経済規模を持ち、政治的影響力も大きい国です。
首都移転計画(ヌサンタラ)なども含め、インフラ投資は継続的に進行しています。
また、RCEP(地域的包括的経済連携)参加国として、域内貿易のハブ機能も期待されています。
つまり、インドネシア拠点は単なる国内市場対応ではなく、ASEAN戦略の足掛かりになり得ます。
なぜ「それでも」なのか
制度は確かに厳格です。
・投資法
・会社法
・競争法
・労働法
いずれも形式要件が明確で、軽視すれば大きなリスクになります。
しかし、裏を返せば「ルールが明確」ということです。
ルールが曖昧な国よりも、
制度を理解し設計すれば予測可能な環境と言えます。
人口優位性
安定成長
デジタル拡大
地政学的ポジション
これらが同時に揃う国は多くありません。
結論:制度を越えた先にある構造的成長
インドネシアは「簡単な国」ではありません。
しかし、「構造的に成長する国」です。
制度理解が必要なのは事実です。
しかし、制度をクリアすれば、長期的な収益基盤を構築できます。
日本企業が今、第二の柱を探すなら、
人口減少市場でのシェア争いか、
人口増加市場での成長戦略か。
選択は明確です。
だからこそ、多くの企業が、
制度リスクを承知で、それでもインドネシアを選ぶのです。
リスクヘッジになる条件とは
インドネシア進出が本当に“保険”になるかどうかは、単に拠点を持つことでは決まりません。
重要なのは、制度理解と設計の精度です。
人口が多い、成長率が高い、若年層が厚い――こうしたマクロ要素だけで進出を決めると、それはリスクヘッジではなく「リスクの分散に見える新たなリスク」になりかねません。
リスクヘッジとして機能するための条件は、次の3点です。
- 制度適合性が担保されていること
- 将来債務が可視化されていること
- 撤退・再編も想定した設計になっていること
つまり、進出前に出口まで設計できているかどうかが鍵になります。
① 新設(PMA設立)の場合
インドネシアで外資として事業を行う場合、一般的な形態はPMA(Penanaman Modal Asing:外資系株式会社)です。
このPMA設立は、制度上は明確に整備されていますが、実務上は慎重な設計が必要です。
最低投資計画額:100億ルピア目安
現在の制度運用では、PMA設立時に総投資計画額として100億ルピア(約1億円規模)を目安とするケースが一般的です。
この金額は必ずしも一括払いを意味するものではありませんが、投資計画として提示する必要があります。ここを理解せずに「小規模テスト進出」の感覚で設立を進めると、制度上の整合性が取れなくなる可能性があります。
リスクヘッジとしての進出を考えるなら、
無理のない資金計画と投資スケジュール設計が前提です。
OSS登録必須
インドネシアではOSS(Online Single Submission)を通じた事業登録が必須です。
NIB(事業基本番号)の取得
業種別ライセンスの申請
リスク区分に応じた追加許可
これらはすべてOSS上で管理されます。
OSS登録を単なる事務手続きと考えるのは危険です。
事業内容とKBLIが一致していない場合、営業許可が無効になるリスクがあります。
KBLI確認
KBLI(事業分類コード)は外資規制、許認可、税務区分と密接に連動します。
たとえば同じ「フィットネス事業」でも、
・施設運営
・健康関連サービス
・オンラインプログラム提供
・物販(サプリ・アパレル)
でKBLIが異なり、必要なライセンスも変わります。
KBLI設計を誤ると、
外資規制違反
営業停止
再申請
といった事態につながります。
新設は自由度が高い一方で、制度適合性の精度がそのまま将来安定性に直結するということを理解すべきです。
② M&Aの場合
既存企業を取得するM&Aは、時間短縮と制度負担軽減の観点で有効な選択肢です。
メリット:
許認可取得済み
人材確保済み
販路構築済み
既存企業が持つ営業許可、ライセンス、ネットワークを引き継げる点は大きな利点です。
市場参入までの時間を短縮でき、立ち上げコストを抑えられる可能性があります。
また、現地スタッフが既に制度や商慣習を理解しているため、オペレーションの安定化が早い傾向があります。
しかし――
デメリット:
未払税金
労働紛争
土地権利(HGB)
OSS未更新
M&Aは「過去」も一緒に買う行為です。
未払税金があれば、買収後に追徴課税を受ける可能性があります。
法人税22%、VAT11%、地方税など、多層的な税制下での過去処理ミスは重大なリスクです。
労働紛争も見逃せません。
解雇時退職金は最大32ヶ月分相当となるケースがあり、未払い債務があれば買収後に表面化します。
土地権利(HGB:Hak Guna Bangunan)は残存期間や担保設定状況を精査しなければなりません。
期限が短い場合、事業継続に影響します。
OSS未更新やライセンス未更新も、営業停止リスクを伴います。
Business Lawyersでも、東南アジアM&AはDDの質が重要と明示。
デューデリジェンス(DD)は、単なる形式確認ではありません。
・株主名簿の整合性
・外資規制適合性
・税務未払い
・労働債務
・競争法(KPPU)届出義務
・環境許可
これらを横断的に精査し、将来債務を価格に織り込む必要があります。
DDの質が低ければ、M&Aはリスクヘッジどころかリスク拡大になります。
新設とM&A、どちらが“保険”になるのか
新設はコントロール性が高いが時間がかかる。
M&Aはスピードが速いが過去リスクを承継する。
重要なのは、
・自社の資本力
・リスク許容度
・成長スピードの必要性
・業種特性
に応じて設計することです。
リスクヘッジになる条件は、
✔ 制度適合性が明確
✔ 将来債務が数値化されている
✔ 競争法届出義務を確認済み
✔ 労務設計が適法
であることです。
リスクヘッジとは「分散」ではなく「構造転換」
インドネシア進出は逃げ場ではありません。
単なる売上拡大策でもありません。
✔ 市場分散
✔ 通貨分散
✔ 人材分散
✔ 制度分散
を通じて、日本一本足打法から二本柱経営へ移行する構造転換です。
しかし、制度理解がなければ、分散は成立しません。
会社法
投資法
競争法
労働法
を横断的に理解し、
新設かM&Aかを戦略的に選択すること。
それが、インドネシア進出を本当の“保険”に変える条件です。
制度を理解した企業だけが、
リスクを制御しながら第二軸を築けます。
中堅企業にとっての現実解
日本経済の構造変化は、すでに多くの企業経営者が肌で感じているはずです。人口減少、国内市場の成熟、労働力不足、円安によるコスト増加。これらは一時的な景気循環ではなく、不可逆的なトレンドです。
大企業は既に多拠点化しています。
アジア・欧米・中東など複数地域に拠点を持ち、為替リスクや市場リスクを分散し、グローバルで収益を確保しています。売上構成比も国内外でバランスが取れ、サプライチェーンも多元化されています。
しかし中堅企業は、
市場リスク集中
通貨リスク集中
人材リスク集中
という三重の集中リスクを抱えています。
売上の大半を日本国内に依存し、原材料や設備を海外から輸入しながらも収益は円建て。円安が進めばコストは上昇し、円高になれば価格競争力が低下する。為替の影響が直接的に経営を揺さぶります。
さらに、国内人材不足は深刻です。特に若年層の採用難は年々悪化しており、将来的な組織維持すら課題になる可能性があります。
円安・人材不足時代の出口戦略は、
第二の収益軸を持つことです。
ここで重要なのは、「第二軸=攻めの拡大」と捉えないことです。中堅企業にとっての海外展開は、爆発的成長を狙うものではなく、経営の安定性を高めるための分散策です。
それは「攻め」ではなく、
分散・保険の経営判断です。
インドネシアは、その選択肢の一つとして現実味を持ちます。人口約2億7,000万人、若年層中心の人口構造、内需拡大、ASEANハブ機能。これらは長期的な市場基盤を形成しています。
しかし、「海外に出る=分散」ではありません。制度理解を伴わない進出は、リスクを増幅させます。
実行伴走型支援の重要性
インドネシア進出において最も危険なのは、「情報は集めたが、制度を理解していない」状態です。市場レポートや視察ツアーで可能性を感じても、実際の法人設立、外資規制確認、契約締結、許認可取得といった実行段階で立ち止まる企業が少なくありません。
PT Japan Fitness Indonesia
PT Japan Fitness Indonesiaでは、
外資規制チェック
法務DD
M&Aスキーム設計
契約実行支援
まで一気通貫で対応。
単なる市場紹介ではなく、
制度設計型支援がリスクヘッジの鍵。
外資規制チェックでは、KBLIコードとポジティブリストを精査し、出資比率制限の有無を確認します。ここを誤れば、設立後に出資構造の再設計が必要になります。
法務DDでは、対象企業の契約関係、許認可状況、労務債務、税務リスクを洗い出します。特に労働法(Law No.13/2003)に基づく退職金債務や未払い残業代は、買収後に発覚すると重大な負担になります。
M&Aスキーム設計では、SPAやSHAを通じて表明保証範囲を明確化し、将来の紛争を防ぎます。競争法(Law No.5/1999)に基づく届出義務の確認も不可欠です。
契約実行支援では、公証手続き、法務人権省登録、OSS更新、銀行口座開設まで伴走します。
実行段階まで責任を持つ体制こそが、分散戦略を成功に導きます。
まとめ:進出そのものが保険ではない
インドネシア進出は、
自動的にリスクヘッジになるわけではありません。
法人を設立しただけでは、分散は成立しません。制度を理解し、設計し、実行し、運営まで管理して初めて第二軸になります。
✔ 外資規制理解
✔ 会社法手続き理解
✔ 労働法リスク把握
✔ 競争法確認
✔ DD徹底
これらを前提に設計して初めて、
“第二の収益軸”になります。
投資法(Law No.25/2007)は外資規制と投資保護を規定し、会社法(Law No.40/2007)は法人運営の基盤を定めます。競争法(Law No.5/1999)は一定規模以上のM&Aに届出義務を課し、労働法(Law No.13/2003)は雇用関係を厳格に規律します。
これらを横断的に理解しなければ、分散戦略は機能しません。
日本一本足打法のまま未来を迎えるのか。
それとも、分散経営へ舵を切るのか。
出口戦略は、制度理解から始まります。
2030年代に向けて、経営の安定性を確保するために必要なのは、「海外進出」という言葉ではなく、「制度設計」という思考です。
進出は目的ではなく、手段です。
目的は、企業の持続可能性を高めること。
そのための第一歩が、法制度理解に基づく戦略設計なのです。

