インドネシアM&A仲介会社を選ぶ前に確認すべき5つのポイント

「案件紹介力」だけで選ぶと失敗する理由

インドネシアM&A市場は近年活発化しています。製造業、消費財、IT、ヘルスケア分野を中心に日系企業の関心は高く、現地企業との資本提携・買収ニーズが増加しています。とりわけ、EV関連サプライチェーン、デジタル決済、Eコマース、物流、教育・医療サービスといった分野では、地場企業との連携を通じて市場参入を図るケースが顕著です。

一方で、「インドネシアは成長市場だから、まずは案件を探そう」「現地に強い仲介会社があるなら紹介してもらえばよい」という発想だけで動くと、想定外の法的リスクを抱える可能性があります。

なぜなら、インドネシアM&Aは日本国内のM&Aとは法制度が大きく異なるからです。

公証人手続きが必須
法務人権省(MOLHR)登録義務
外資規制(ポジティブリスト)
競争法(KPPU届出)
労働法による退職金リスク

これらは単なる「手続き論」ではありません。どれか一つでも見落とせば、取引無効、行政制裁、許認可停止、想定外コスト発生といった重大リスクに直結します。

つまり、「案件を紹介できる仲介会社」=「安全にクロージングできる会社」ではありません。

実務ではむしろ逆で、紹介力が強い会社ほど法務設計が弱いケースも存在します。案件数を重視するあまり、法令適合性の精査が後回しになることもあるからです。

本記事では、法律面に特化しながら、仲介会社選定時に確認すべき5つの重要ポイントを解説します。


1. 公証人手続きを理解しているか

インドネシアでは、株式譲渡・合併・会社分割などのM&A行為は、公証人(Notaris)関与が法的に必須です。日本のように当事者間契約のみで効力が確定する構造とは異なります。

株式譲渡証書は公証人作成
定款変更は公証人認証
合併契約書も公証人関与

さらに、その後の変更登記は法務人権省(Ministry of Law and Human Rights:MOLHR)への登録が必要です。

ここで重要なのは、単に「公証人に出せばよい」という話ではない点です。

公証人は当事者の代理人ではありません。書類作成は行いますが、取引構造の法的妥当性やリスク配分まで精査してくれるわけではありません。

仲介会社が公証人任せにしている場合、

・株式譲渡制限条項の見落とし
・優先買取権の未確認
・外資規制違反状態の承認

といった問題が発生することがあります。

安全なクロージングを実現するには、公証人手続きを理解し、事前に構造設計できる仲介会社かどうかが重要です。


2. 法務人権省(MOLHR)登録まで見据えているか

M&Aは契約締結で終わりではありません。インドネシアでは、株主構成や取締役変更は法務人権省への登録が完了して初めて対外的効力が安定します。

登録遅延や書類不備があると、

・銀行口座変更不可
・許認可更新不可
・株主権行使に支障

といった実務上の問題が発生します。

また、定款変更が伴う場合、MOLHR承認が必要です。

紹介力だけに強い仲介会社は、契約締結後の行政手続きまでフォローしないケースがあります。

本当に重要なのは、

「契約書締結」ではなく
「行政登録完了」までの一気通貫設計

です。

MOLHR登録を前提としたクロージングスケジュールを構築できる会社かどうかは、必ず確認すべきポイントです。


3. 外資規制(ポジティブリスト)を精査しているか

インドネシアでは、外資参入業種はポジティブリスト(大統領令第10号/2021号等)により規定されています。

外資100%可能業種もありますが、

流通業
建設業
教育
医療
一部デジタル分野

では外資比率制限や条件付き参入が存在します。

M&Aにより既存企業を買収する場合でも、買収後の資本構成が規制に適合していなければなりません。

紹介力重視の仲介会社は、

「案件自体は魅力的」
「業績も良好」

という観点で話を進めがちですが、外資規制適合性の確認を後回しにすることがあります。

しかし、外資比率違反が発覚した場合、

・是正命令
・事業許可取消
・株式再編強制

といった重大リスクが発生します。

仲介会社がポジティブリストを実務レベルで理解しているかは、必須確認事項です。


4. 競争法(KPPU届出)を把握しているか

インドネシア競争法(Law No.5 of 1999)では、一定規模以上のM&AについてKPPU(競争委員会)への届出義務があります。

売上高・資産額が基準を超える場合、取引完了後30日以内に報告が必要です。

届出を怠ると、行政制裁や罰金の対象となります。

日本では事前届出制度が一般的ですが、インドネシアは事後報告制度が基本です。この違いを理解していない仲介会社は少なくありません。

案件紹介力だけで選んだ場合、

「クロージング後にKPPU報告が必要と判明」
「報告遅延で制裁リスク」

という事態が起こり得ます。

KPPU対応を含めた設計ができるかどうかは、仲介会社選定の重要な分岐点です。


5. 労働法による退職金リスクを織り込んでいるか

M&Aにおいて見落とされがちなのが労働法(Law No.13 of 2003)リスクです。

所有者変更や合併により、従業員が退職を選択した場合、退職金支払い義務が発生するケースがあります。

インドネシアでは、

退職金(Severance Pay)
勤続補償金
補償金

が法定計算式に基づき算出されます。

長期勤続従業員が多い企業では、数億円規模の潜在債務となる可能性があります。

紹介力重視の仲介会社は、財務諸表上の債務のみを見る傾向があります。しかし、労務債務は貸借対照表に顕在化していないことが多いのです。

労務デューデリジェンスを実施し、退職金リスクを価格に反映できるかどうかは極めて重要です。

インドネシアM&Aの法的前提

まず理解すべき基本法制度です。

インドネシアにおけるM&Aは、日本の実務感覚とは大きく異なります。契約書を締結し、対価を支払えば完了するという単純な構造ではありません。公証人手続き、株主総会決議、行政登録、外資規制確認、競争法届出、労働債務承継など、複数の法体系が同時に関与します。

そのため、M&Aは「契約交渉プロジェクト」であると同時に「法定手続きプロジェクト」でもあります。ここでは、最低限押さえるべき基本法制度を整理します。


■ 会社法(Law No.40 of 2007)

株式譲渡は公証人手続き必須

株主総会決議が必要な場合あり

法務人権省登録で効力確定

日本のような私的契約完結型ではありません。

インドネシアM&Aの中心法は会社法(Law No.40 of 2007)です。対象会社が株式会社(PT)の場合、この法律が直接適用されます。

株式譲渡の基本構造

日本では、株式譲渡契約(SPA)と株主名簿書換で効力が確定するケースが多いですが、インドネシアではそれだけでは不十分です。

まず、株式譲渡は原則として会社の定款規定に従います。多くの定款では、既存株主への優先購入権(Right of First Refusal)や取締役会承認が規定されています。

そのため、売主と買主が合意しても、

・既存株主の同意
・取締役の承認

がなければ譲渡は成立しません。

さらに、公証人による公正証書(Akta Notaris)の作成が必要です。これは単なる形式ではなく、法的効力を確定させる重要手続きです。

公証人が作成した議事録は、法務人権省(Ministry of Law and Human Rights)に登録されます。この登録が完了して初めて、株主変更が対外的効力を持ちます。

つまり、私的契約だけでは効力は完成しません。

株主総会決議が必要なケース

一定割合以上の株式譲渡、合併、重要資産譲渡などは株主総会(RUPS:Rapat Umum Pemegang Saham)の特別決議が必要です。

例えば、

・会社資産の50%超の譲渡
・合併・統合
・会社分割

などは特別決議事項となります。

公告義務や債権者保護手続きも発生します。債権者は一定期間内に異議を申し立てることが可能です。

このように、会社法はM&Aを「契約」ではなく「法定プロセス」として設計しています。


■ 投資法(Law No.25 of 2007)

外資企業(PMA)取得では外資規制確認が不可欠。

業種ごとの外資比率制限が存在します。

対象会社が外資法人(PT PMA)の場合、投資法が直接関与します。買収後の株主構成が外資規制に適合している必要があります。

現在はポジティブリスト制度により、原則開放ですが例外的に制限業種が存在します。

例えば、

・小売業の一部:外資出資制限あり
・医療分野:出資比率制限
・建設業:資本金区分規制

対象会社のKBLI(事業分類コード)を正確に確認することが不可欠です。

KBLIは単なるコードではなく、外資可否、リスク区分、必要許可を決定する重要要素です。

仮にローカル企業を買収する場合でも、外資比率が増加することで業種規制に抵触する可能性があります。

その結果、

・株主構成再設計
・ローカルパートナー追加
・持株比率調整

が必要になることがあります。

M&A前の法的デューデリジェンスでKBLI確認は最優先事項です。


■ 競争法(Law No.5 of 1999)

一定規模以上のM&Aでは
KPPU(インドネシア競争委員会)への届出義務(30日以内)。

競争法(Law No.5 of 1999)は独占禁止法に相当する法律です。

一定の資産総額または売上高を超えるM&Aについては、取引完了後30日以内にKPPUへ届出を行う必要があります。

基準は業種により異なりますが、売上高や資産総額が一定水準を超える場合が対象です。

届出を怠ると行政制裁や罰金が科される可能性があります。

特に大手企業や市場シェアが高い企業の買収では、競争制限性の審査が行われる可能性があります。

M&A契約においては、KPPU届出を前提条件(Condition Precedent)とする設計が一般的です。


■ 労働法(Law No.13 of 2003)

解雇時退職金:最大32ヶ月分相当

最低賃金:ジャカルタで月500万ルピア超水準

労務債務は買収価格に直結します。

インドネシア労働法は労働者保護色が極めて強い制度です。

M&Aにおいては、従業員の雇用関係が原則として承継されます。事業承継後にリストラを行う場合、退職金支払い義務が発生します。

退職金制度は勤続年数と解雇理由によって決まります。最大32か月分相当のケースもあります。

例えば、

勤続8年以上で基本給9か月分相当の退職金が発生する例もあります。

さらに、地域別最低賃金(UMR)が毎年改定されます。ジャカルタ特別州では月500万ルピアを超える水準です。

従業員数が多い企業では、退職金債務が数十億ルピア規模に達する可能性があります。

そのため、デューデリジェンスでは、

・未払給与
・未払社会保険(BPJS)
・未払残業代
・退職金引当不足

を精査する必要があります。

労務債務は買収価格に直結します。

価格調整条項(Price Adjustment)や補償条項(Indemnity)を適切に設計しなければ、想定外の負担が発生します。


総括

インドネシアM&Aは、

・会社法による公証・登録手続き
・投資法による外資規制確認
・競争法による届出義務
・労働法による雇用債務承継

という四つの法制度が交錯する複雑なプロジェクトです。

契約交渉だけでは完結しません。

法定プロセスを理解し、段階的に進めることが成功の前提です。

制度を正確に理解しないままM&Aを進めると、

・株主構成違反
・行政登録未了
・競争法違反
・退職金爆発

といった重大リスクに直面します。

インドネシアM&Aは難易度が高い。しかし、法制度を前提に設計すれば、リスクは管理可能です。

成功企業は、契約前に制度を理解し、制度に沿ったスキームを組み立てています。

インドネシアM&A仲介会社を選ぶ前に確認すべき5つのポイント

インドネシアでのM&Aは、日本国内のM&Aとは構造的に異なります。単なる株式譲渡契約(SPA)の締結で完了するわけではなく、行政登録・外資規制・競争法・労働法・税務などが複雑に絡み合います。

したがって、M&A仲介会社の選定は極めて重要です。

「価格が安い」「案件情報が多い」といった理由だけで選定すると、後から重大な法的リスクが発生する可能性があります。

ここでは、インドネシアM&A仲介会社を選ぶ前に必ず確認すべき5つのポイントを解説します。


① 外資規制・KBLIコードを理解しているか

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インドネシアでは事業分類コード「KBLI」により外資規制が決まります。

KBLIは単なる産業分類番号ではありません。

・外資出資比率上限
・必要ライセンス
・監督官庁
・投資要件

これらが連動しています。

例えば同じ「小売業」でも、売場面積や取扱商品によって外資規制が異なる場合があります。教育、医療、建設、デジタルプラットフォーム分野では特に慎重な確認が必要です。

仲介会社が以下を説明できるか確認しましょう。

対象会社のKBLIコードは何か
外資比率制限はあるか
PMA化が必要か

買収対象がローカル法人(PT)であっても、外国資本が入ることで自動的にPT PMAへ転換する必要があるケースがあります。この場合、最低投資額100億ルピア要件や資本金増額が必要になることがあります。

KBLIの理解が不十分な仲介会社は、外資規制違反リスクを見落とします。

ここを理解していない仲介会社は極めて危険です。

M&Aの初期段階で外資規制を誤認すると、クロージング後に是正措置を求められ、最悪の場合は事業停止や罰金の対象になります。


② 公証・行政登録プロセスを理解しているか

インドネシアの株式譲渡は、私的契約だけでは効力が確定しません。

株式譲渡には公証人手続きが必須。

これは日本との大きな違いです。

確認事項:

SPA締結後の公証プロセス
法務人権省登録
OSS(Online Single Submission)更新

インドネシアでは、株式譲渡契約締結後、公証人が議事録を作成し、会社定款変更や株主構成変更を法務人権省へ登録する必要があります。

さらに、OSSシステム上で株主情報や経営陣情報を更新しなければなりません。

形式不備は効力無効リスクになります。

例えば、株主総会決議の形式が不適切であった場合、株式譲渡が法的に無効と判断される可能性があります。

また、登録遅延や未更新の場合、銀行口座凍結やライセンス停止リスクもあります。

仲介会社が単にマッチングだけを行い、クロージング後の行政手続きに関与しない場合、重大な抜け漏れが生じることがあります。

M&Aは契約締結で終わりではありません。行政登録完了までがプロセスです。


③ 競争法(KPPU)対応を理解しているか

一定規模以上のM&Aでは、KPPU(インドネシア競争委員会)への届出義務があります。

売上・資産基準を超える場合、クロージング後30日以内に報告しなければなりません。

無届の場合、制裁金の対象になります。

仲介会社が競争法上の届出基準を説明できるかは重要な判断基準です。

特に、日本本社の売上規模が大きい場合、インドネシア子会社の規模が小さくても届出対象になるケースがあります。

競争法対応を軽視する仲介会社は危険です。


④ 労働法リスクを説明できるか

M&A後の最大リスクは労務です。

インドネシアでは、

解雇時退職金:最大32ヶ月分相当
最低賃金:ジャカルタで月500万ルピア超水準
週40時間労働規制

といった制度があります。

株式譲渡では雇用契約は自動承継されます。

未払い退職金、未加入社会保険、労働紛争が存在すれば、買収企業がそのリスクを引き継ぐことになります。

仲介会社が労務デューデリジェンスの重要性を理解しているか確認すべきです。

労働紛争履歴の確認
退職金引当状況
PKWT(有期契約)更新状況
BPJS加入状況

これらをチェックせずに買収するのは極めて危険です。


⑤ 税務・ストラクチャリング提案ができるか

インドネシアの税制は複雑です。

法人税
付加価値税(PPN)
源泉税
配当課税

などが絡みます。

株式譲渡か資産譲渡かによって税負担は大きく異なります。

仲介会社が単に価格交渉を行うだけでなく、税務構造を理解しているかが重要です。

クロージング後に想定外の税負担が発生するケースは少なくありません。

税務アドバイザーと連携できる仲介会社が望ましいです。


仲介会社選定は“リスク管理”である

インドネシアM&Aは、

外資規制
行政登録
競争法
労働法
税務

が絡む高度な法務プロジェクトです。

仲介会社がこれらを理解していない場合、取引は成立しても、その後の運営が破綻します。

価格や成功報酬率だけで選定するのではなく、制度理解の深さで判断すべきです。

インドネシアM&Aの成功は、仲介会社選定で8割決まると言っても過言ではありません。

法制度を熟知し、クロージング後まで伴走できるパートナーを選ぶことが、最大のリスクヘッジとなります。

③ 競争法(KPPU)届出基準を把握しているか

インドネシアM&Aにおいて、見落とされがちでありながら極めて重要な論点が競争法(独占禁止法)上の届出義務です。インドネシアでは、競争法(Law No.5 of 1999)に基づき、一定規模以上の企業結合についてはKPPU(Komisi Pengawas Persaingan Usaha:インドネシア競争委員会)への届出義務が課されます。

JETRO資料でも重要論点として挙げられています。

特に問題となるのが、売上・資産基準です。具体的には、当事会社グループの合算売上高や資産総額が一定基準を超える場合、KPPUへの事後届出が必要となります。基準値は政令等で定められており、インドネシア国内売上や資産を基準に判断されます。

売上・資産基準

30日以内届出義務

無届リスク

届出は原則としてクロージング後30営業日以内に行う必要があります。この「30日以内」という期限管理は極めて重要で、実務上はSPA締結日ではなく効力発生日を基準にカウントするため、誤認が生じやすいポイントです。

無届リスクは深刻です。届出義務を怠った場合、行政制裁金が課される可能性があります。制裁金は企業規模によって高額になることがあり、企業価値評価にも影響します。さらに、競争制限的と判断された場合、是正措置が命じられるリスクもあります。

仲介会社がこの論点を説明できるかは重要です。

単に「売上が一定規模を超えていないから大丈夫」という曖昧な説明では不十分です。対象会社単体ではなく、親会社・子会社を含むグループベースで判断する必要があるため、国際グループ企業では特に慎重な分析が求められます。

また、業種によっては市場シェア分析が必要となる場合もあります。インドネシアの市場定義は日本の公正取引委員会の運用とは異なる部分があるため、現地実務を理解した専門家の関与が不可欠です。


④ 労務リスクを織り込んだ価格設計ができるか

Business Lawyersの記事でも指摘されている通り、
東南アジアM&Aでは労務債務が大きな論点です。

インドネシアの労働法(Law No.13/2003)および雇用創出法改正は、労働者保護色が強い制度設計となっています。そのため、買収対象企業が抱える潜在的労務債務は、企業価値評価に直接影響します。

確認すべき事項:

未払い退職金

労働紛争履歴

契約社員の扱い

未払い退職金は最も重大なリスクの一つです。解雇時には法定退職金が最大32ヶ月分相当になるケースもあり、簿外債務として存在する場合があります。勤続年数が長い従業員が多数いる場合、将来的なキャッシュアウトは非常に大きくなります。

労働紛争履歴の確認も不可欠です。過去に労働裁判所で争われた案件がある場合、その内容と和解条件を精査する必要があります。未解決の紛争が存在すれば、買収後に引き継ぐリスクがあります。

契約社員(PKWT)の扱いも重要です。更新回数制限を超えている場合、自動的に無期契約(PKWTT)とみなされる可能性があります。これにより退職金負担が増大するケースがあります。

価格だけでなく、将来債務を織り込んだ設計ができる仲介会社を選びましょう。

EBITDA倍率だけで価格を算出するのは危険です。将来の退職金支払、最低賃金上昇リスク、社会保障負担増加を織り込んだディスカウントが必要です。アーンアウト条項や補償条項を活用し、リスクを契約上で調整する設計力が求められます。


⑤ 日本法とインドネシア法の両方を理解しているか

海外M&Aの難しさは、「二つの法体系が交錯すること」にあります。日本企業が買収主体となる場合、日本法上の会計基準、取締役責任、内部統制義務と、インドネシア法上の会社法・投資法・労働法が同時に適用されます。

PT Japan Fitness Indonesiaのように、
現地と日本双方の制度を理解する体制があるかが重要です。

例えば、株式譲渡契約(SPA)の準拠法をどちらにするか、紛争解決をシンガポール仲裁にするか、インドネシア裁判所にするか、といった設計は戦略的判断です。表明保証条項の内容も、日本的慣行とインドネシア実務では差があります。

参考として、
日本M&Aセンターは国内案件で豊富な実績がありますが、
海外案件では現地法対応が不可欠です。

国内案件と異なり、海外案件では現地公証人手続き、法務人権省登録、OSS更新、土地権利確認など、ローカル実務が必須です。日本側アドバイザーのみでは完結しません。

Digima-Japanの情報でも、
「海外M&Aはローカルパートナーとの連携が成功の鍵」とされています。

現地弁護士、会計士、税務専門家との連携が不可欠です。文化差・言語差も大きな障壁になります。インドネシア語契約と英語契約の解釈差が争点になるケースもあります。

インドネシアM&A仲介費用の目安

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インドネシアにおけるM&Aは、単なる「株式売買」ではなく、法制度・許認可・外資規制・労務義務などを包括的に引き継ぐ高度な取引です。そのため、仲介費用の構造も日本国内案件とは若干異なる特徴があります。

ここでは、インドネシアM&A仲介費用の一般的な目安と、その背景にある実務的な意味を整理します。

まず理解すべきなのは、M&A費用は「仲介報酬」だけではないという点です。成功報酬、デューデリジェンス費用、公証費用、行政登録費用など、複数のコストが発生します。これらを総合的に見積もることが重要です。

一般的な成功報酬型(レーマン方式)

取引額5億円:3~5%

小規模案件:最低報酬設定あり

インドネシアM&A仲介では、日本と同様にレーマン方式が一般的です。これは取引金額に応じて一定割合を成功報酬として支払う仕組みです。

例えば、取引額が5億円の場合、3〜5%が相場となります。つまり、1500万円〜2500万円程度が成功報酬のレンジです。ただし、案件の難易度やクロスボーダー性、対象企業の財務透明性によって料率が変動する場合があります。

小規模案件では最低成功報酬(ミニマムフィー)が設定されるケースが多く、たとえ取引金額が低くても数百万円規模の報酬が発生することがあります。これは案件調査・マッチング・交渉支援などの固定工数が一定以上発生するためです。

また、成功報酬とは別に、着手金や月額リテイナー費用が発生する場合もあります。特に買い手側アドバイザーとして探索から支援する場合、リテイナー契約が一般的です。

法務DD費用:

50万円~300万円

法務デューデリジェンス(Legal Due Diligence)は、買収対象企業の法的リスクを精査するプロセスです。インドネシアでは、会社法(Law No.40/2007)に基づく定款整備状況、株主構成、取締役構成、過去の株式譲渡履歴、訴訟リスク、契約書の有効性などを詳細に確認します。

さらに重要なのは、外資規制への適合状況です。投資法(Law No.25/2007)およびポジティブリストに基づき、当該業種が外資100%取得可能かどうかを確認しなければなりません。

小規模案件であれば50万円程度から実施可能な場合もありますが、複数拠点や多人数の従業員を抱える企業では200〜300万円規模になることもあります。

法務DDを省略することは極めて危険です。表面上は問題なく見える企業でも、OSS登録未更新や許認可期限切れが後から発覚するケースがあります。

財務DD費用:

100万円~500万円

財務デューデリジェンスでは、財務諸表の信頼性、税務申告状況、債務内容、キャッシュフローの実態を分析します。

インドネシアでは、税務リスクが潜在しているケースも少なくありません。過去の申告漏れや源泉税未払いなどが後から発覚すると、買収後に多額の追徴課税を受ける可能性があります。

財務DD費用は企業規模に応じて変動し、100万円〜500万円程度が一般的な目安です。売上規模が大きい企業や、複雑なグループ構造を持つ企業ではさらに高額になることもあります。

公証・登録費用:

数十万円規模

インドネシアでは、株式譲渡や定款変更は公証人による議事録作成が義務付けられています。その後、法務人権省への登録が必要です。

私的契約だけでは効力が確定しない点が、日本との大きな違いです。公証費用や登録費用は数十万円規模が一般的ですが、案件規模や定款変更内容により変動します。

これらは必須コストであり、省略することはできません。


まとめ:インドネシアM&Aは「法制度理解力」で選ぶ

インドネシアM&Aは、

会社法(Law No.40/2007)

投資法(Law No.25/2007)

競争法(Law No.5/1999)

労働法(Law No.13/2003)

を横断する法務案件です。

単なる価格交渉や企業評価だけでなく、法制度を正確に理解しているかどうかが、成否を分けます。

仲介会社を選ぶ際は、

✔ 外資規制理解
✔ 公証手続き理解
✔ 競争法届出理解
✔ 労務債務理解
✔ 日印双方制度理解

この5点を必ず確認してください。

例えば、競争法(Law No.5/1999)では一定規模以上の取引に届出義務があります。売上や資産基準を超える場合、KPPUへの報告が必要です。これを怠れば制裁金の対象となる可能性があります。

労働法(Law No.13/2003)に基づき、退職金債務や未払い残業代が承継対象となる場合もあります。労務債務を把握せずに価格交渉を進めると、買収後に想定外の負担が発生します。

また、外資規制を正確に理解していない仲介会社では、出資比率違反や業種制限に抵触するリスクがあります。

インドネシアM&Aは「価格の問題」ではありません。
それは「制度の承継」です。

価格が安くても、法的リスクが大きければ意味がありません。
逆に、制度を理解し、リスクを可視化し、契約条件に反映できれば、安全な投資が可能になります。

インドネシア進出を安全に成功させるために、
まずは法制度に強い専門家へご相談を。

法務理解力こそが、インドネシアM&A成功の最大の鍵です。

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