インドネシアM&A相談の方法と費用


インドネシアM&Aは「法制度理解」が成否を分ける

ASEAN最大、約2億7,000万人の人口を抱えるインドネシアは、製造業・消費財・IT・ヘルスケア分野を中心にM&Aが活発化しています。近年はEV関連産業やデジタルプラットフォーム企業への投資も増加し、日本企業による買収・資本参加案件も増えています。

実際、トヨタ自動車による現地生産体制強化、ユニチャームの事業拡張、味の素の現地法人再編など、大手日系企業もM&Aや組織再編を活用して市場拡大を図っています。

しかし、インドネシアM&Aは日本国内とは全く異なる法制度の下で行われます。

会社法
投資法
競争法
労働法
外資規制
許認可制度

が複雑に絡み合い、デューデリジェンス不足が重大リスクに直結します。

本記事では、インドネシアM&Aの相談方法と費用相場を、具体的な法律名・制度名・数値を交えながら法務特化で解説します。

インドネシアM&Aの基本法体系

インドネシアにおけるM&A(合併・買収)は、日本とは制度設計や手続きの流れが大きく異なります。契約書を締結すれば効力が発生するという単純な構造ではなく、会社法、投資法、外資規制、競争法、労働法など複数の法制度が重層的に関与します。

特に重要なのは、「私的合意」だけでは効力が完成しないという点です。株式譲渡契約(SPA)を締結しても、それだけでは対外的効力は発生せず、公証・省庁登録・株主名簿変更といった法定手続きが不可欠となります。

ここでは、インドネシアM&Aの基本法体系を整理します。


① 会社法(Law No.40 of 2007)

インドネシアM&Aの中心法令は
**会社法(Law No.40/2007 on Limited Liability Companies)**です。

この法律は、株式会社(PT)の設立、株式譲渡、合併、会社分割、株式取得、清算までを包括的に規定しています。インドネシアで行われるM&Aの大半は、PT(Perseroan Terbatas)の株式譲渡または合併スキームによって実行されます。

主なポイント

株式譲渡は取締役承認が必要

株主総会(RUPS)決議が必要な場合あり

公証人による議事録作成義務

法務人権省登録必須

まず、株式譲渡は原則として会社の定款に従う必要があります。多くの定款では、既存株主への優先購入権(Right of First Refusal)や取締役会の承認要件が規定されています。

そのため、売主と買主が合意しても、既存株主の同意が得られなければ譲渡は実行できません。

また、重要なM&A(合併、資産譲渡、一定割合以上の株式譲渡など)は、株主総会(RUPS:Rapat Umum Pemegang Saham)の特別決議が必要です。出席株主の一定割合以上の賛成が必要とされます。

さらに、公証人による議事録作成義務があります。インドネシアでは会社関連の重要決議は公証人が作成する公正証書(Akta Notaris)として作成されなければなりません。

この公正証書は、法務人権省(Ministry of Law and Human Rights)へ電子登録されます。この登録が完了して初めて、株式譲渡や役員変更が対外的効力を持ちます。

日本と異なり、私的契約だけでは効力が確定しない点が最大の特徴です。

日本では株式譲渡契約と株主名簿書換で足りるケースが多いですが、インドネシアでは公証・登録が不可欠です。

合併(Merger)・買収(Acquisition)の手続き

会社法は、合併(Merger)、統合(Consolidation)、買収(Acquisition)、会社分割(Spin-off)を明確に定義しています。

合併の場合、合併計画書の作成、債権者公告、従業員通知、株主総会決議、公証手続き、省庁登録が必要です。

債権者は公告から一定期間内に異議を申し立てることができます。これを無視して合併を進めることはできません。

つまり、M&Aは「契約交渉」だけではなく、「会社法上の法定プロセス」を確実に履行するプロジェクトなのです。


② 投資法(Law No.25 of 2007)と外資規制

外資企業(PMA)を取得する場合は
**投資法(Law No.25/2007)**が適用されます。

対象会社がPT PMA(外資法人)の場合、買収後の株主構成が投資法および関連規制に適合している必要があります。

例えば、日本企業がローカル企業を買収する場合、外資比率が増加することで業種規制に抵触する可能性があります。

現在は「ポジティブリスト」制度により業種ごとの外資規制が定められています。

原則開放ですが、例外的に制限業種が存在します。

例:

小売業:条件付き外資

医療分野:出資制限あり

建設業:資本金区分規制あり

小売業の一部では、外資出資比率に上限が設けられています。また、医療分野では外資出資比率が一定割合に制限されるケースがあります。

建設業では、資本金区分やライセンス区分によって参入可能範囲が異なります。

KBLIコード(事業分類コード)の確認が不可欠です。

KBLI(Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesia)は、事業活動を分類する公式コードです。対象会社がどのKBLIで登録されているかにより、外資可否が決まります。

買収前のデューデリジェンスでは、

・KBLI登録内容
・実際の事業活動との整合性
・外資比率制限
・投資総額要件

を確認する必要があります。

KBLIを誤って理解したまま買収すると、後に株主構成の変更を求められるリスクがあります。


外資買収における実務上の注意点

外資によるM&Aでは、投資省(旧BKPM)への報告義務が発生する場合があります。株主構成変更はOSSシステム上で更新が必要です。

また、買収後に投資計画変更がある場合は、再申請が求められることがあります。

利益送金と配当

投資法は利益送金の自由を保障していますが、税務義務を履行することが前提です。源泉税、法人税、配当税の計算を誤ると、後に税務リスクが発生します。

労働法との関係

M&Aに伴う事業承継では、労働法(Law No.13 of 2003)の規定が適用されます。従業員の雇用関係は原則承継されます。

従業員が承継を拒否する場合、退職金支払い義務が発生する可能性があります。

勤続8年以上で基本給9か月分相当の退職金が発生するケースもあります。大規模買収では、退職金債務が数十億ルピア規模に膨らむこともあります。


競争法との関係

一定規模以上のM&Aは、インドネシア競争委員会(KPPU)への事後届出義務が発生します。

売上高または資産総額が一定基準を超える場合、30日以内の届出が必要です。

これを怠ると行政制裁の対象となります。

③ 競争法(Law No.5 of 1999)

インドネシアにおけるM&A(企業買収・合併)を検討する際、見落としてはならない重要な法令が競争法(Law No.5 of 1999)です。正式名称は「独占行為及び不公正な事業競争の禁止に関する法律」であり、市場支配やカルテル、不当な価格操作などを防止するための包括的な競争規制法です。

この法律は、日本の独占禁止法に相当する位置付けを持ち、M&Aにおいても一定規模以上の取引に対して届出義務を課しています。インドネシア市場は人口規模が大きく、特定分野では市場集中が進みやすいため、競争政策は年々重要性を増しています。

特に注意すべきは、M&Aの完了後に一定期間内の報告義務が課される点です。

一定規模以上のM&Aでは
KPPU(インドネシア競争委員会)への届出義務があります。

KPPUは独立機関として、企業結合が市場競争を著しく阻害しないかを審査します。

売上・資産基準超過で届出
30日以内報告義務
無届は制裁金対象

具体的には、一定の売上高または資産総額を超える企業結合は、クロージング後30営業日以内にKPPUへ報告する必要があります。

この基準を超えるか否かの判断は、買収対象企業だけでなく、買収企業グループ全体の財務数値も合算して評価される場合があります。そのため、日本本社の規模が大きい場合、インドネシア子会社の規模が小さくても届出対象となるケースがあります。

無届の場合、行政制裁金が科される可能性があります。制裁金は数十億ルピア規模に達することもあり、財務的影響だけでなく、企業信用にも影響を与えます。

JETRO資料でも強調される重要論点です。

JETROのレポートでは、インドネシアのM&Aにおいて競争法対応を怠るリスクが明確に指摘されています。特に外資企業は「自国法は把握しているが、現地競争法を軽視する」傾向があり、これが後の紛争や制裁に繋がる事例も報告されています。

さらに、KPPUは近年、デジタルプラットフォーム分野や流通業界に対する監視を強化しています。ECプラットフォームや物流統合案件では、市場シェアの集中度が問題視されるケースがあります。

M&A戦略を立案する際は、単に買収価格やシナジー効果を検討するだけでなく、競争法上のリスク評価を事前に行うことが不可欠です。

競争法は「取引後の手続き」ではなく、「取引前の戦略設計」に組み込むべき法務論点です。


④ 労働法(Law No.13 of 2003)

M&A後の最大リスクは労務です。

企業買収は単に株式や資産を取得する行為ではありません。従業員の雇用契約も承継されるため、労務リスクがそのまま引き継がれます。

インドネシアの労働法(Law No.13 of 2003)は、労働者保護色が非常に強い制度です。

解雇時退職金:最大32ヶ月分相当
最低賃金:ジャカルタで月500万ルピア超水準
週40時間労働規制

これらは、M&A後の統合作業(PMI)において重大な影響を及ぼします。

解雇時退職金リスク

インドネシアでは、解雇時に支払う退職金(セベランス)が高額になる可能性があります。

勤続年数や解雇理由によっては、最大32ヶ月分相当の支払い義務が生じるケースもあります。

例えば、基本給が月500万ルピアの場合、単純計算で1億6千万ルピア相当以上の支払いが必要になる可能性があります。

M&A後に組織再編を行う際、この退職金負担が予想以上に大きくなることがあります。

そのため、買収前のデューデリジェンスでは、
未払い賃金
未払い社会保険
労働契約形態
労働紛争履歴
退職金引当状況

を徹底的に確認する必要があります。

労務DD(デューデリジェンス)を軽視すると、買収後に想定外の支出が発生します。

最低賃金と固定費構造

最低賃金制度(UMR)は州ごとに異なります。

ジャカルタ特別州では月500万ルピア超水準です。

地方都市では比較的低水準ですが、それでも毎年改定が行われるため、長期的な固定費見通しを立てる必要があります。

M&A後に拠点統合を検討する場合、最低賃金水準は重要な意思決定要素になります。

労働時間規制

インドネシアでは週40時間労働規制が基本です。

残業には割増賃金支払い義務があります。

労働時間管理が不適切な場合、行政指導や訴訟リスクが発生します。

特に外資企業は「成果主義」や「フレックス型」制度を導入する傾向がありますが、現地法と整合性を取らなければなりません。

労働契約の承継

M&Aは労働契約の承継を伴います。

株式譲渡の場合、法人は同一であるため、雇用契約も原則継続します。

資産譲渡や事業譲渡の場合でも、実質的に事業が継続する場合は従業員保護の観点から契約承継が問題になります。

従業員が条件変更に同意しない場合、退職金支払い義務が発生する可能性があります。

そのため、M&A契約書では労務リスクの分担を明確に定めることが重要です。

表明保証条項
補償条項
退職金負担分担

などを契約で明確化することで、後の紛争を防止できます。

PMIと文化統合

インドネシアは宗教・文化要素が強い国です。

金曜礼拝(Jumat)
ラマダン期間の労働時間短縮
宗教大祭手当(THR)

これらを無視した組織統合は、従業員離職やモチベーション低下を招きます。

M&A成功の鍵は、財務統合だけでなく、文化統合です。

法務と労務の一体設計

競争法対応と労働法対応は、M&Aの両輪です。

競争法を怠れば制裁金リスク。
労働法を軽視すれば高額退職金リスク。

インドネシアのM&Aは「価格交渉」だけで完結するものではありません。

法令理解+デューデリジェンス+契約設計+PMI戦略

これらを一体で設計することが不可欠です。

M&Aは成長戦略であると同時に、法務リスク管理の高度なプロジェクトでもあります。

インドネシア市場で持続的に成長するためには、競争法と労働法の両面を深く理解した戦略設計が不可欠です。

インドネシア企業の組織形態とM&Aスキーム

インドネシアでのM&Aを検討する際、まず理解すべきなのは「どの法人形態を対象にするのか」という点です。組織形態を誤解したまま買収スキームを設計すると、外資規制違反や許認可失効といった重大リスクが生じます。

参考URL(Mercury Law)にある通り、インドネシアでは主に以下の形態があります。

PT(株式会社)

PMA(外資系株式会社)

駐在員事務所

合弁会社

PT(Perseroan Terbatas)は、インドネシア会社法(Law No.40/2007)に基づく一般的な株式会社形態です。インドネシア国内資本のみで設立される場合もあれば、外資を含む形で設立される場合もあります。

PMA(Penanaman Modal Asing)は、外資系株式会社を指します。投資法(Law No.25/2007)に基づき、外国資本が1%でも入ればPMA扱いとなります。外資比率、最低資本金、業種制限が関係するため、M&AではPMAへの転換や外資比率変更が論点となります。

駐在員事務所は、営業活動を直接行えない拠点です。市場調査や連絡業務に限定されるため、通常はM&A対象にはなりませんが、既存ネットワーク活用のための足掛かりとして利用されることがあります。

合弁会社は、インドネシア企業と外国企業が共同出資して設立する形態です。外資規制のある業種では、このスキームが選択されることが多いです。

M&Aでは通常、

① 株式譲渡(Share Deal)
② 事業譲渡(Asset Deal)
③ 合弁出資

のいずれかを選択します。

株式譲渡は、対象会社の株式を取得することで経営権を得る方法です。会社そのものを引き継ぐため、契約関係、従業員、許認可も原則として承継されます。ただし、簿外債務や過去の法令違反も引き継ぐリスクがあります。

事業譲渡は、特定の資産や事業のみを取得する方法です。不要な負債を切り離せるメリットがありますが、許認可や契約を個別に再取得・再締結する必要がある場合があります。

合弁出資は、新会社設立または既存会社への出資を通じて参入する方法です。外資規制回避や現地パートナー活用の観点で有効です。

特に土地保有権(HGB:Hak Guna Bangunan)の確認は極めて重要です。

HGBは建物利用権に相当し、土地の使用権を一定期間付与する制度です。インドネシアでは外国人や外資企業が土地を直接所有できないため、HGBやHGUなどの権利形態を確認する必要があります。更新期限、名義人、担保設定の有無などを精査しなければなりません。


インドネシアM&Aの相談方法

① 初期相談(スキーム設計)

M&A成功の鍵は、初期段階でのスキーム設計にあります。後から修正することは可能ですが、コストと時間が倍増します。

PT Japan Fitness Indonesiaのような現地法人を持つ支援会社では、

外資規制チェック

KBLI確認

買収スキーム設計

税務影響分析

を実施します。

外資規制チェックでは、対象業種がポジティブリスト上どのように位置付けられているかを確認します。外資100%可能か、合弁が必要か、最低資本金はいくらか、といった点が重要です。

KBLI確認は極めて重要です。対象会社が登録している事業コードが、実際の事業内容と一致しているかを確認します。不一致の場合、買収後に営業許可が無効となる可能性もあります。

税務影響分析では、株式譲渡益課税、印紙税、VAT、将来の配当課税などをシミュレーションします。

初期段階で法制度確認を怠ると、
買収後に営業許可が無効となる可能性もあります。


② 法務デューデリジェンス(DD)

Business Lawyersの記事でも強調されている通り、
インドネシアDDでは以下が重点項目です。

株主名簿の実態確認

OSS登録状況

NIB番号の有効性

税務未払い

労働紛争履歴

環境許可

株主名簿の実態確認では、名義株主と実質株主の関係を確認します。名義株主リスクは東南アジア特有の論点であり、実態と登記が一致しない場合があります。

OSS登録状況やNIB番号の有効性確認は、事業が合法的に運営されているかを示す基本情報です。期限切れや未登録の場合、重大なリスクとなります。

税務未払いの確認は、過去の納税状況を精査し、追徴課税リスクを把握します。

労働紛争履歴は、潜在的な訴訟リスクを示します。退職金未払い問題は特に注意が必要です。

環境許可は製造業や大型施設で重要です。違反があれば営業停止リスクがあります。

特に名義株主リスクは東南アジア特有の論点です。


③ 契約・クロージング

SPA(株式譲渡契約)

SHA(株主間契約)

表明保証

公証人立会い

英語+インドネシア語併記が一般的です。

SPAでは価格、支払条件、前提条件(CP)、補償条項などを定めます。SHAは経営権、取締役構成、配当方針などを規定します。

表明保証条項では、税務、労務、環境、許認可などに関する保証を行い、違反時の補償責任を明確化します。

インドネシアでは公証人の関与が必要な場合が多く、株式譲渡の効力発生には法務人権省への登録が必要です。

英語+インドネシア語併記が一般的で、解釈優先言語を明示することが重要です。

インドネシアM&Aの費用相場

インドネシア市場におけるM&Aは、近年急速に拡大しています。製造業、ヘルスケア、IT、物流、消費財、小売、飲食など幅広い業種でクロスボーダー案件が増加しています。特に日系企業によるインドネシア企業の買収、または合弁出資は活発化しており、「ゼロから進出するよりも既存企業を取得した方が早い」という判断が増えています。

しかし、M&Aは単なる株式売買ではありません。費用構造を理解せずに進めると、想定外のコストが発生します。ここでは、インドネシアM&Aにおける一般的な費用相場を整理します。

① アドバイザリー費用(成功報酬)

一般的なレーマン方式:

取引額5億円:3~5%

小規模案件:最低報酬設定あり

インドネシアにおけるM&Aアドバイザリー費用は、日本と同様にレーマン方式(取引金額に応じた段階的料率)を採用するケースが一般的です。取引規模が約5億円の場合、成功報酬は概ね3〜5%程度が目安となります。

例えば、5億円の案件であれば、1500万円〜2500万円程度が成功報酬のレンジになります。ただし、案件規模が小さい場合でも最低報酬(ミニマムフィー)が設定されることが多く、数百万円規模の最低成功報酬が発生する場合があります。

また、成功報酬とは別に、着手金や月額リテイナー費用が設定されるケースもあります。特にクロスボーダー案件では、現地調査や企業探索に時間がかかるため、一定の固定費用が発生する点に注意が必要です。

② 法務DD費用

規模により:

50万円~300万円

法務デューデリジェンス(DD)は、買収対象企業の法的リスクを洗い出す作業です。会社定款、株主構成、契約書、訴訟リスク、労働契約、許認可、土地権利など、多岐にわたる項目を確認します。

小規模案件であれば50万円程度から実施可能な場合もありますが、従業員数が多い企業や複数拠点を持つ企業では200万円〜300万円以上かかるケースもあります。

特にインドネシアでは、契約書の形式不備や、OSS登録未更新、ライセンス期限切れなどが発見されることがあります。法務DDを省略すると、買収後に重大な法的問題が発覚する可能性があります。

③ 財務DD費用

100万円~500万円規模

財務デューデリジェンスは、財務諸表の正確性、税務申告状況、債務内容、キャッシュフローの実態などを検証する作業です。インドネシアでは税務リスクが潜在しているケースも多く、未払い税金や過少申告が後から発覚することがあります。

企業規模に応じて費用は変動しますが、100万円〜500万円規模が一般的なレンジです。売上規模が大きい企業や複雑な取引構造を持つ企業では、それ以上の費用が発生することもあります。

④ 公証・登録費用

数十万円規模。

インドネシアでは、株式譲渡や定款変更には公証人による議事録作成と法務人権省への登録が必要です。私的契約だけでは効力が確定しない点が大きな特徴です。

公証費用、登録費用、印紙税などを含め、数十万円規模のコストが発生します。案件規模や定款変更内容によって変動しますが、これらは必須費用として見込んでおく必要があります。


失敗事例に共通する法律リスク

インドネシアM&Aの失敗事例には、いくつか共通点があります。

外資規制未確認

買収対象企業の業種が外資規制対象であった場合、出資比率に制限が生じます。外資100%取得が不可能な業種で株式取得契約を締結してしまうと、取引が成立しない、または再構築が必要になるケースがあります。

競争法届出漏れ

一定規模以上のM&Aでは、競争法(Law No.5/1999)に基づき、インドネシア競争委員会(KPPU)への届出が必要です。売上や資産基準を超える場合、届出義務が発生します。未届出は制裁金対象となる可能性があります。

労務債務未把握

労働法(Law No.13/2003)は労働者保護色が強く、退職金や未払い残業代などの債務が潜在していることがあります。M&Aでは労働契約が承継されるため、これらの債務も引き継ぐ可能性があります。

土地権利誤認

インドネシアの土地権利制度は日本と異なります。HGB(建設利用権)やHGU(事業利用権)など、権利の種類を正確に理解しなければなりません。所有権と誤認して買収後に問題が発覚するケースもあります。

OSS未更新

事業ライセンスやNIBが最新状態でなければ、営業継続が困難になる可能性があります。更新漏れは行政指導や罰金につながることもあります。

これらはすべて法務確認不足が原因です。


まとめ:インドネシアM&Aは「法制度の承継」である

インドネシアM&Aは、

会社法(Law No.40/2007)

投資法(Law No.25/2007)

労働法(Law No.13/2003)

競争法(Law No.5/1999)

を横断する総合法務案件です。

株式を取得するということは、その会社の契約、負債、労務義務、税務リスク、許認可状況をすべて承継することを意味します。

価格交渉よりも重要なのは、
「その会社の法的義務をどこまで理解しているか」。

買収価格が割安であっても、隠れた法務リスクがあれば、最終的なコストは大きくなります。逆に、法的リスクを正確に把握し、契約条件に反映させることができれば、安全な投資が可能です。

安全かつ確実に進めるためには、
現地制度を熟知した専門家との連携が不可欠です。

インドネシアM&Aは、単なる取引ではなく、「制度を引き継ぐ経営判断」です。

制度を理解し、リスクを可視化し、適切に設計すること。

それこそが、インドネシアM&A成功の本質です。

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