なぜ世界企業はインドネシアへ進出するのか
2億7,000万人市場と制度改革が呼び込む「世界資本」

ASEAN最大の人口約2億7,000万人を抱えるインドネシア。
平均年齢は約30歳前後と若く、内需拡大が続く同国は、世界企業にとって「最後の巨大フロンティア市場」とも称されます。
東南アジアの中でも、単一国家としてこれほどの人口規模を持つ国は稀です。ジャカルタ首都圏だけでも3,000万人規模の経済圏を形成し、スラバヤ、メダン、バンドンなどの都市も急速に成長しています。単なる「新興国」ではなく、複数の中規模国家が一つにまとまったような市場構造を持つのがインドネシアの特徴です。
しかし、世界企業が進出する理由は「人口規模」だけではありません。
最大のポイントは、法律・制度改革による投資環境の改善です。
実際、近年の外資流入は、資源・自動車・電池・デジタル分野など多岐にわたり、米国、中国、韓国、シンガポール、日本などの資本が競合しています。グローバル企業が進出判断を行う際、彼らが最も重視するのは「法的安定性」と「資本回収の予見可能性」です。
本記事では、具体的な法律名・数値・日系企業動向を踏まえ、なぜ世界企業がインドネシアへ進出するのかを法制度の観点から解説します。
1. 投資法とオムニバス法がもたらした外資環境の変化
■ 投資法(Law No.25 of 2007 on Investment)
外国投資の基本法であるLaw No.25 of 2007は、インドネシアにおける外資受け入れの基盤を定めています。
この法律の重要性は、「外資を歓迎する姿勢」を条文上で明確に示している点にあります。具体的には、
利益送金の自由
国有化時の補償規定
紛争時の国際仲裁利用
が明文化されています。
利益送金の自由とは、外国投資家が得た利益や配当を外貨で本国へ送金できる権利を保障するものです。資本回収が可能であることは、投資判断の前提条件です。
また、国有化や収用が行われる場合には適正な補償が必要であると規定されています。さらに、投資紛争が発生した場合、国内裁判所だけでなく国際仲裁機関の利用が可能である点も、グローバル企業にとって安心材料となっています。
世界企業は「市場の大きさ」よりも、「法的安全性」を重視します。投資法はその根幹を支えています。
■ オムニバス法(Law No.11 of 2020 on Job Creation)
2020年に施行された**オムニバス法(Law No.11 of 2020)**は、インドネシアの投資環境を大きく変えました。
この法律は70本以上の関連法を改正する包括改革法であり、目的は投資促進と雇用創出です。
主なポイントは以下の通りです。
ネガティブリスト(DNI)廃止 → ポジティブリスト化
事業許可のリスクベース分類(OSS-RBA)
労働規制の一部緩和
かつてのネガティブリスト制度では、外資参入禁止・制限業種が列挙されていました。しかしポジティブリストへの転換により、「原則開放、例外制限」という考え方に変更されました。
これにより、外資100%可能業種が拡大しました。
世界企業は制度改革のタイミングを逃しません。オムニバス法施行以降、製造業・IT・物流分野での外資参入が加速しました。
2. 法人設立のハードルは高いが、透明性は向上
■ 会社法(Law No.40 of 2007)
外資法人(PT PMA)設立の根拠法。
インドネシアで外国資本が事業を行う場合、原則として設立する法人形態はPT PMA(Perseroan Terbatas Penanaman Modal Asing)です。その法的根拠となるのが、2007年会社法(Law No.40 of 2007)です。この法律は、株式会社の設立、株主構成、取締役会の構成、監査役(コミサリス)の役割、株式発行、合併・分割・清算などを包括的に規定しています。
PT PMAは、日本の株式会社に相当する法人形態ですが、外国投資が含まれる点で通常のPT(内資法人)とは区別されます。会社法第7条では、株式会社は最低2名以上の株主を必要とすると規定されています。したがって、日本本社と関連会社、あるいは日本法人と個人株主といった構成で設立されるケースが一般的です。
最低投資総額と資本金要件
最低投資総額は**100億ルピア(約9〜10億円)**が原則。
払込資本金はその25%以上。
この100億ルピアという基準は、外国投資会社に適用される一般的な最低投資計画額です。これは「会社設立時に全額を現金で準備しなければならない」という意味ではありませんが、事業計画全体として少なくとも100億ルピア規模の投資を行う意思と能力が求められるということです。
払込資本金については、その25%以上を払込済資本として計上する必要があります。つまり、最低でも25億ルピア相当を払込資本金として用意しなければなりません。
この要件は、日本の中小企業にとっては決して低いハードルではありません。しかし、これはインドネシア政府が「実体のある投資家」を選別するためのフィルターでもあります。ペーパーカンパニーや短期的な投機的投資を排除し、長期的にコミットする企業を受け入れるための制度設計です。
また、業種によっては別途最低資本金要件が設定される場合があります。例えば、金融業、保険業、建設業、医療関連事業などは、監督官庁の規制によりさらに高額の資本金が求められることがあります。
取締役・コミサリス体制
会社法では、PTは少なくとも1名以上の取締役(Direksi)と1名以上のコミサリス(Dewan Komisaris)を設置することが義務付けられています。コミサリスは監督機能を担い、日本でいう監査役に近い存在です。
この二層構造(執行と監督の分離)は、企業統治の透明性を高める制度的仕組みです。外国企業が進出する場合、現地居住取締役を置くかどうか、駐在員をどの役職に任命するかなど、ガバナンス設計も重要な論点になります。
手続きの透明化とOSS制度
以前は不透明だった手続きも、現在はOSS(Online Single Submission)制度でオンライン一元管理されています。
かつてのインドネシアでは、法人設立後に複数の官庁や地方自治体を訪問し、個別に許可を取得する必要がありました。担当官の裁量や解釈の違いによる不確実性もあり、手続きに時間とコストがかかることが問題視されていました。
現在はOSS制度により、
・法人登録
・NIB(事業基本番号)取得
・事業ライセンス申請
・標準証明の登録
などがオンラインで完結する仕組みへ移行しました。
OSSはリスクベースアプローチを採用しており、事業内容に応じて必要な許可が自動的に分類されます。これにより、手続きの透明性と予測可能性が大きく向上しました。
透明性向上がもたらす効果
制度が明文化され、透明性が高まったことが、世界企業にとって重要な安心材料となっています。
法令が条文化され、手続きがオンラインで公開されることにより、恣意的運用の余地が縮小しました。これは外国企業にとって極めて重要な要素です。なぜなら、投資判断は法的安定性と予測可能性に大きく依存するからです。
また、投資法や会社法の改正は国会で審議され、公布されるため、公式文書として確認できます。さらに、OSSのシステム上で必要書類や手続き要件が明示されるため、準備不足による不測のリスクを軽減できます。
ハードルが高い=リスクが高いではない
最低投資額100億ルピアという要件は確かに高額ですが、これは裏を返せば制度が明確であるということです。ルールが曖昧であれば、参入後の不確実性が高まりますが、明確な基準が存在することで計画立案が可能になります。
成功企業は、
・投資総額の分割計画
・段階的資本投入
・KBLI選定の最適化
・ガバナンス設計
を事前に行い、制度を前提にした事業モデルを構築しています。
世界企業が評価するポイント
グローバル企業にとって重要なのは、規制の有無よりも「予測可能性」です。インドネシアはかつて手続きの煩雑さで知られていましたが、近年はデジタル化と法制度整備が進み、透明性は大きく改善されています。
世界銀行のビジネス環境評価においても、法人設立手続きの簡素化は改善ポイントとして評価されてきました。
もちろん、依然として実務上の課題や地域差は存在します。しかし、少なくとも制度は明文化され、投資家が情報を取得しやすい環境が整っています。
結論
法人設立のハードルは確かに高い。しかし、その分制度は明確であり、透明性は向上しています。
会社法(Law No.40 of 2007)とOSS制度の組み合わせにより、外資法人設立のプロセスは標準化されました。
重要なのは、
・最低投資額の理解
・資本金設計
・ガバナンス体制の構築
・OSS活用による適正申請
を事前に戦略的に設計することです。
インドネシアは「簡単に参入できる市場」ではありません。しかし、「制度を理解すれば計画できる市場」へと進化しています。
透明性の向上は、長期投資を行う企業にとって最大の安心材料となっています。
3. 労働法改革と巨大労働市場
インドネシアは、東南アジア最大の人口を抱える国家であり、同時に世界有数の労働供給国でもあります。人口規模は約2億7,000万人、労働人口は約1億4,000万人を超えています。この規模はASEANの中でも圧倒的であり、製造業、IT産業、サービス業にとって大きな魅力となっています。
しかし、その一方でインドネシアは伝統的に「労働者保護色が強い国」として知られてきました。企業にとっては、豊富な人材供給というメリットと、厳格な労働法制という課題が同時に存在する市場です。したがって、インドネシアで成功するためには、巨大労働市場の魅力と、制度上の制約を両面から理解することが不可欠です。
労働法改革はこのバランスをどのように変えたのか。ここでは制度と市場規模の両面から整理します。
■ 労働法(Law No.13 of 2003)
インドネシアの労働法制の基盤となるのが、労働法(Law No.13 of 2003)です。この法律は雇用契約、最低賃金、労働時間、社会保障、解雇手続き、退職金などを包括的に規定しています。
制度の最大の特徴は、労働者保護を強く打ち出している点です。企業が従業員を雇用する際には、単に契約書を締結するだけではなく、法的義務を体系的に理解する必要があります。
代表的な制度として、以下の三点が挙げられます。
解雇時の労使協議義務
退職金(セベランス)制度
地域別最低賃金(UMR)
これらはインドネシア労働法の中核をなす制度です。
解雇時の労使協議義務
インドネシアでは、企業が一方的に解雇を決定することは原則として認められていません。解雇を行う場合、まず労使協議が必須となります。企業と従業員(または労働組合)との間で協議を行い、合意形成を図ることが求められます。
協議で合意に至らない場合は、労働裁判所での手続きに進むケースもあります。この点は日本と比較しても厳格です。解雇は「経営判断」ではなく「法的手続き」の問題と捉えられます。
そのため、採用段階から人員計画を慎重に設計し、評価制度を明確にしておくことが重要です。パフォーマンス管理が曖昧だと、後の紛争リスクが高まります。
退職金(セベランス)制度
インドネシア労働法の象徴的な制度が退職金(セベランス)です。退職金は勤続年数に応じて算定されます。
勤続8年以上の場合、基本給9か月分以上の退職金が発生するケースもあります。
例えば基本給が500万ルピアの場合、単純計算で4,500万ルピア以上の支払い義務が生じる可能性があります。さらに勤続功労金や未消化有給休暇の精算などが加算されるため、実際の支払額はさらに増加します。
これは企業にとって大きな財務リスクとなり得ます。特に複数人を同時に解雇する場合、数億ルピア規模の支出になることもあります。
したがって、退職金制度は単なる福利厚生ではなく、財務戦略の一部として理解すべき制度です。
地域別最低賃金(UMR)
最低賃金制度(UMR)は州ごとに設定され、毎年改定されます。地域差が大きい点が特徴です。
ジャカルタ特別州では約500万ルピア前後と高水準です。一方、西ジャワ州や中部ジャワ州では200万〜400万ルピア程度と地域差があります。
拠点選定は単なる立地戦略ではなく、人件費戦略そのものです。ジャカルタは市場規模と人材の質が高い一方、固定費負担が大きくなります。地方都市は人件費を抑えられる反面、インフラや市場アクセスの制約があります。
最低賃金を下回る契約は無効となり、行政指導や罰金の対象になります。また宗教大祭手当(THR)も1か月分相当の支給義務があり、これも人件費設計に織り込む必要があります。
オムニバス法による改革
2020年に成立したオムニバス法(Job Creation Law)は、投資環境改善を目的として労働法の一部を改正しました。
有期契約の柔軟化
退職金算定基準の調整
これにより、有期契約の運用がより柔軟になり、企業がプロジェクト型雇用を活用しやすくなりました。また退職金制度についても一部算定基準が見直され、企業負担が一定程度軽減されました。
ただし、「労働者保護色が強い」という基本構造は維持されています。完全な自由化ではなく、あくまでバランス調整です。
この改革は、外国投資を呼び込むためのメッセージでもあります。企業にとっては、従来よりも予測可能性が高まり、雇用設計の自由度が若干広がったと言えます。
巨大労働市場の魅力
人口約2億7,000万人、労働人口約1億4,000万人超という規模は、世界的に見ても大きな市場です。若年層比率が高く、今後も労働力供給が続くと予測されています。
製造業にとっては、大規模な生産拠点を構築できる可能性があります。IT産業にとっては、デジタル人材の供給源として魅力的です。近年はスタートアップやデジタル経済の発展により、エンジニアやデータ分析人材の育成も進んでいます。
また、国内市場が大きいということは、単なる生産拠点ではなく「消費市場」としても機能することを意味します。これはフィットネス、ヘルスケア、教育などのサービス産業にとっても大きなチャンスです。
制度と市場の両立
インドネシアの労働市場は、「規模」と「保護」が共存しています。規模だけを見れば非常に魅力的ですが、制度を理解せずに参入するとリスクが顕在化します。
逆に言えば、制度を理解し、法務・労務設計を事前に整えれば、巨大市場の恩恵を最大限に享受できます。
労働法改革は企業に一定の柔軟性を与えました。しかし、依然として労働者保護の枠組みは強固です。したがって、成功する企業は「市場規模」だけでなく「制度設計」まで含めて戦略を構築しています。
インドネシアは、単なる低コスト労働市場ではありません。制度を前提に設計する企業にとっては、持続可能な成長が可能な巨大市場です。労働法改革と人口ボーナス。この二つの交差点にこそ、インドネシア進出の勝ち筋があります。
4. 日系企業の進出数と実態

ジェトロ(日本貿易振興機構)の統計によれば、
インドネシア進出日系企業数は2,000社超と報告されています。
この「2,000社超」という数字は、単なる件数ではありません。ASEAN諸国の中でも、タイ・ベトナムと並び、あるいはそれ以上に日本企業が集積している市場であることを示しています。とりわけインドネシアは人口規模約2億7,000万人を抱える内需国であり、製造拠点としてだけでなく「消費市場」としての魅力が高い点が特徴です。
進出企業の業種内訳を見ると、自動車、二輪車、電機、消費財、食品、商社、金融、物流、IT、ヘルスケア、教育など多岐にわたります。これは、インドネシアが単なる加工拠点ではなく、総合的な経済圏へと発展していることを示しています。
自動車分野では:
トヨタ自動車
ホンダ
が生産拠点を展開。
自動車産業はインドネシアの基幹産業の一つです。トヨタ自動車は現地法人を通じて組立工場を展開し、国内市場のみならずASEAN域内への輸出拠点としても機能しています。ホンダも四輪・二輪ともに大規模生産体制を構築し、インドネシア国内シェアの拡大に成功しています。
これらの企業が数十年にわたり事業を継続している事実は、法制度の予見可能性と投資保護環境が一定水準で整っていることを示唆します。もちろん法改正は頻繁に行われますが、「制度がある」「申請すれば通る」という枠組みが機能していることが重要です。
消費財・食品分野では:
味の素
花王
などが長年事業を展開しています。
味の素は調味料市場で確固たるブランドを築き、花王は洗剤・日用品分野で広範な販売網を構築しています。これら企業は、単に商品を販売するだけでなく、現地法人を通じた生産、マーケティング、人材育成を行っています。
消費財企業の長期安定運営は、次の3点を意味します。
第一に、法人設立制度が実務上機能していること。
第二に、外資規制が一定の透明性を持って運用されていること。
第三に、労働法制が予測可能な範囲で管理可能であること。
これら大手企業の安定運営は、法制度の安定性を示す指標でもあります。
もちろん、制度は固定的ではありません。オムニバス法の制定や最低賃金の毎年改定など、変化は存在します。しかし、制度変更が「法令として公布され、手続きが明示される」という点において、投資環境としての整備は進んでいます。
また、近年はデジタル経済分野への進出も増加しています。ECプラットフォーム、フィンテック、ITサービス企業が相次いで参入し、若年人口を背景に市場拡大が進んでいます。製造業中心だった進出構造が、サービス産業へと広がりつつある点も注目すべき変化です。
インドネシア進出企業数の増加は、「人口が多いから」という単純な理由だけではありません。法制度が整備され、申請フローが明確化され、外国人雇用や税務制度が運用可能な水準にあるからこそ、2,000社超という数字が維持されているのです。
5. 外国人ビザ制度の整備
世界企業が安心して進出するためには、駐在員制度が不可欠です。
現地法人の立ち上げや技術移転、品質管理、経営統括など、初期段階では日本人駐在員の役割が極めて重要です。そのため、外国人が合法的に就労できる制度が整備されているかどうかは、外資誘致の根幹をなします。
必要な制度:
RPTKA(外国人雇用計画)
IMTA(就労許可)
KITAS(滞在許可)
RPTKAは企業が外国人を雇用するための計画承認制度です。職位、期間、技術移転計画などを提出し、政府の承認を得ます。これは「外国人雇用が無制限ではない」ことを示すと同時に、「手続きに従えば雇用できる」ことを意味します。
IMTAは就労許可を指し、現在は制度改正によりRPTKA承認と一体化される形で運用されています。職種や役職が変更される場合には再承認が必要となることがあります。
KITASは滞在許可証であり、就労目的での滞在には就労KITASが必要です。観光ビザでの就労は違法となり、摘発対象となります。
外国人雇用基金(DKP-TKA)は月額100USD。
DKP-TKAは外国人1名あたり毎月100米ドル相当を政府に納付する制度です。これは外国人雇用に伴う社会的負担を調整する目的で設けられています。年間では1,200米ドルの固定費となり、複数名を派遣する企業では予算計上が必要です。
制度は明確で、適法に申請すれば取得可能です。
ここが重要なポイントです。インドネシアの外国人雇用制度は「禁止」ではなく「管理」です。必要書類を整え、要件を満たせば取得できます。制度が不透明で恣意的に運用される環境とは異なり、一定のルールに基づいて申請・承認が行われます。
法制度が「整備されている」ことが、外資誘致の重要要素です。
外国人が合法的に働けるかどうかは、企業の投資判断に直結します。RPTKA、IMTA、KITAS、DKP-TKAといった制度が整備され、オンライン申請システムが導入されていることは、インドネシアが外資誘致を重視している証拠でもあります。
もちろん、更新管理や職務変更時の再申請など、実務上の注意点は存在します。しかし、制度が存在し、手続きが明示されているという点において、インドネシアは外資企業にとって十分に検討可能な投資先です。
結論
インドネシア進出日系企業数2,000社超という数字は、市場規模だけでなく、制度整備の成果でもあります。自動車、消費財、食品、サービス分野で長年事業を継続する大手企業の存在は、法制度が機能していることの証明です。
さらに、外国人雇用制度が整備されていることは、外資企業にとって大きな安心材料となります。RPTKA、IMTA、KITAS、DKP-TKAという枠組みは明確であり、適法に運用すれば問題なく取得可能です。
インドネシア進出の成功は、市場規模だけでなく、制度理解と適法運用にかかっています。制度を正しく理解し、戦略に組み込む企業こそが、持続的な成長を実現できるのです。
6. なぜ今、世界企業は加速するのか
近年、欧米・中国・韓国・日本などの多国籍企業が、相次いでインドネシアへの投資を加速させています。製造業のみならず、IT、デジタルサービス、ヘルスケア、食品、エネルギー、インフラ分野まで幅広く進出が拡大しています。
なぜ今、世界企業はインドネシアへの進出を本格化させているのでしょうか。
理由は三つです。
① 巨大内需市場
人口2億7,000万人。中間層拡大。
インドネシアは世界第4位の人口規模を持つ国家であり、その人口構成は非常に若いことが特徴です。生産年齢人口の割合が高く、消費市場としての潜在力はASEAN諸国の中でも群を抜いています。
単に人口が多いだけではありません。近年は都市部を中心に中間層が急拡大しており、可処分所得の増加とともに消費の質が変化しています。これまで価格重視だった市場が、ブランド志向や品質志向へと移行しつつあります。
特にジャカルタ首都圏やスラバヤ、バンドンなどの大都市圏では、ショッピングモール、フィットネスジム、外食産業、EC市場が急成長しています。デジタル決済の普及も進み、オンライン消費の拡大が顕著です。
世界企業が注目しているのは、「輸出拠点」としてだけでなく、「消費市場」としてのインドネシアです。自国内で完結する巨大内需は、グローバル経済の不安定化が進む中で、安定的な売上基盤となります。
② 法制度の明確化
投資法・会社法・オムニバス法により制度が整理。
かつてのインドネシアは、法制度の複雑さや行政手続きの不透明さが課題とされてきました。しかし近年、政府は積極的に投資環境改革を進めています。
投資法(Law No.25/2007)は外国投資家の権利保護を明確化し、会社法(Law No.40/2007)は法人設立・運営の枠組みを整備しました。そして決定的だったのがオムニバス法(Law No.11/2020)です。
オムニバス法は、雇用・投資・許認可制度を横断的に改正し、投資障壁の緩和を目的とした包括法です。これにより外資規制の整理、ライセンス取得の簡素化、リスクベースアプローチの導入などが進みました。
現在ではOSS(Online Single Submission)システムを通じて、事業登録がオンラインで完結できる仕組みが整っています。リスクベースライセンス制度により、事業リスクに応じた許認可分類が明確化されました。
制度が整理されることで、投資家にとって最も重要な「予見可能性」が向上します。どの業種で、どの出資比率で、どの許認可が必要なのかが事前に把握できる環境は、世界企業にとって大きな安心材料です。
③ ASEANハブ機能
地理的に東南アジア中心部。
インドネシアは地理的にASEANの中心部に位置し、海上物流・航空ネットワークの要衝でもあります。マラッカ海峡に近接し、アジア主要市場へのアクセスに優れています。
ASEAN経済共同体(AEC)の枠組みにより、域内貿易の自由化が進んでおり、インドネシアを拠点とした地域展開が可能です。さらに、RCEP(地域的包括的経済連携)などの多国間協定も追い風となっています。
製造業にとっては労働力確保と輸出拠点の両立が可能であり、サービス業にとっては域内展開の足掛かりとなります。
近年では、サプライチェーンの分散化が進む中、中国依存からの脱却を図る企業が増えています。インドネシアはその代替先として有力な候補となっています。
まとめ:世界企業は「制度安定」を評価している
インドネシアは、
投資法(Law No.25/2007)
会社法(Law No.40/2007)
労働法(Law No.13/2003)
オムニバス法(Law No.11/2020)
という明確な法体系を持ち、投資環境を改善してきました。
重要なのは、単に法律が存在することではありません。政府が継続的に制度改革を進めているという事実そのものが、投資家の信頼を高めています。
巨大市場だけでなく、制度改革の継続性こそが、世界企業を引き寄せる最大の理由です。
法制度が明確であれば、リスクを定量化できます。リスクが定量化できれば、投資判断が可能になります。これが世界企業の論理です。
インドネシア進出をご検討中の企業様へ
法人設立から外資規制確認、労務・駐在員ビザ取得まで、法制度を踏まえた伴走型支援が不可欠です。
市場ポテンシャルだけを見て進出する時代は終わりました。今求められているのは、「制度を理解した上での戦略的進出」です。
法務に強い進出支援で、御社のグローバル戦略を確実に実現します。


