【インドネシア】ビザの種類と取得方法は?観光やビジネス、就労など目的や期間別に紹介
観光・ビジネス目的のビザ取得方法
インドネシアは、世界有数の観光地として知られるバリ島をはじめ、ジャカルタやスラバヤなど経済拠点としても注目されている国です。観光や商談、展示会参加など、目的によって適用されるビザの種類や手続きが異なります。特に日本国籍者の場合、以前は「ビザ免除制度(Bebas Visa Kunjungan)」が適用されていましたが、現在は一時的に運用が停止されており、観光やビジネス目的での短期渡航であっても必ずビザを取得する必要があります。ここでは、30日以内の短期滞在と、30日以上の長期滞在に分けて、取得方法と注意点を詳しく解説します。
30日以内の短期滞在の場合
30日以内の観光・短期ビジネス滞在には、「到着時訪問ビザ(Visa on Arrival:VOA)」または「電子ビザ(e-VOA)」を利用するのが一般的です。対象となる活動は観光・親族訪問・商談・トランジット・商品購入・治療・政府用務など幅広く、観光旅行だけでなく簡単なビジネス出張にも適用されます。
**VOA(Visa on Arrival)**は、インドネシア主要空港(スカルノ・ハッタ国際空港、ングラ・ライ国際空港など)や港で到着時に申請でき、30日間の滞在が認められます。必要書類は、有効期間6か月以上のパスポートと帰国または第三国への航空券、そして発給費用として500,000ルピア(約5,000円)の支払い証明書のみです。空港の到着ロビー内に設けられた専用カウンターで申請と支払いを済ませ、その後、入国審査カウンターでビザを提示することで入国できます。
一方、**e-VOA(電子ビザ)**は、事前にオンラインで申請・支払いを済ませることで、入国当日の手続きを大幅に短縮できる便利な方法です。インドネシア法務人権省の公式サイト(https://evisa.imigrasi.go.id/)から申請でき、渡航14日前から48時間前までの間に手続きを完了させる必要があります。申請時には、パスポートの顔写真ページと証明写真データをアップロードし、クレジットカード(VISA/MasterCard/JCB)で支払いを行います。承認後、登録したメールアドレスに電子ビザが届くため、印刷して入国審査で提示します。
どちらの方法でも、30日を超える滞在は原則不可ですが、1回に限り30日間の延長が可能です。延長手続きはオンライン申請後に現地の入国管理事務所で面接や撮影を受ける必要があり、申請期限は滞在期限の14日前から期限切れ前までです。なお、延長手続きを誤って新規申請扱いにしてしまうと「オーバーステイ」と見なされ、1日あたり1,000,000ルピアの罰金、60日を超えると強制退去および再入国禁止処分が科せられるため注意が必要です。
また、VOAやe-VOAでは就労や報酬を伴う活動は禁止されています。商談・会議・契約交渉などの「ビジネス活動」は認められますが、現地で販売・サービス提供・収益行為を行うことは違法とされます。観光・商用の区分を曖昧にせず、目的に合わせたビザを選択することが、トラブル防止のための基本です。
30日以上の長期滞在の場合
30日を超えて滞在する場合や、出張を繰り返すケースでは、「一次訪問ビザ(Single Entry Visa)」または「数次訪問ビザ(Multiple Entry Visa)」の取得が必要です。これらは、事前にオンラインでe-Visaとして申請し、現地の活動内容に応じたカテゴリを選択します。
**一次訪問ビザ(Single Entry)**は、1回限りの入国で最長60日まで滞在できるビザです。商談・会議・展示会への出席、現地支店の監査や品質検査、顧客へのアフターサービスなど、具体的な業務目的を伴う出張に適しています。滞在期間は30日単位で延長可能で、最大4回(合計180日)まで延長することが可能です。申請手続きはインドネシア法務人権省入国管理総局サイトから行い、パスポートの顔写真ページ、証明写真、招へい企業からの推薦状などをアップロードします。審査後に発行された電子ビザを印刷して入国審査時に提示すれば入国できます。
一方、**数次訪問ビザ(Multiple Entry Visa)**は、年間を通じてインドネシアへの出入国を繰り返すビジネスパーソン向けのビザです。1回の滞在は最長60日間で、有効期限は1年・2年・5年の中から選択できます。頻繁に商談や会議、展示会出席などで訪問する企業関係者にとって、手続きの手間を減らせる実用的な選択肢です。申請方法はシングルエントリーと同様ですが、発給対象は継続的な取引関係がある企業や法人に限られます。
いずれの長期滞在ビザでも共通して重要なのは、「滞在目的の明確化」と「正確な書類提出」です。観光目的の延長や、ビジネスビザでの就労行為は不法滞在と見なされ、罰金や退去処分の対象となります。インドネシアの出入国管理は近年デジタル化が進み、申請・支払い・承認すべてがオンラインで完結する仕組みが整っていますが、制度改正や手数料の変更も頻繁に行われるため、渡航前には必ず公式サイト(imigrasi.go.id)や在インドネシア日本国大使館の最新情報を確認することが不可欠です。
インドネシアでの就労目的ビザ取得の流れと注意点
インドネシアで合法的に就労するためには、必ず現地法に基づく「就労ビザ(ITAS:Izin Tinggal Terbatas)」を取得する必要があります。観光ビザや商用ビザでは労働行為が認められておらず、就労が確認された場合は罰則や強制送還の対象となるため、入国前の正しい手続きを理解しておくことが重要です。就労ビザの取得は個人単位で行うことはできず、現地の雇用主がスポンサーとして政府に申請を行う形が基本となります。ここでは、インドネシアでの就労を希望する外国人が取得すべきビザの手続きと流れ、そして注意点について詳しく解説します。
雇用主によるスポンサーシップ
インドネシアでは、外国人が労働する場合、必ず現地法人や団体が雇用主として「スポンサー」となり、政府に対して外国人労働者を雇用する許可を申請する必要があります。このスポンサー制度は、外国人の雇用を適正に管理し、国内の雇用機会を守ることを目的として設けられています。最初に行うべき手続きは「外国人労働者雇用計画書(RPTKA:Rencana Penggunaan Tenaga Kerja Asing)」の取得です。RPTKAは、雇用主が外国人をどのような職種・期間・条件で採用するかを労働省に提出し、承認を受けるための計画書であり、これが認可されなければ次の段階に進むことはできません。
RPTKAが承認されると、次に雇用主は「外国人労働許可証(IMTA:Izin Mempekerjakan Tenaga Kerja Asing)」を申請します。IMTAは、特定の外国人を特定の職務に従事させる許可証であり、職種や勤務先、勤務地などが明確に記載されます。承認には数週間を要することもあり、また業種によっては追加書類の提出を求められる場合もあります。こうした雇用主側の手続きを経て、初めて外国人本人が就労ビザ申請を行うことが可能になります。
ITAS(就労ビザ)の申請
RPTKAおよびIMTAが取得された後、外国人本人による就労ビザの申請が開始されます。インドネシアでは就労ビザを「ITAS(Izin Tinggal Terbatas:一時滞在許可)」と呼び、これが外国人が国内で就労・居住するための正式な許可となります。近年では、従来の紙ベース手続きがオンライン化されており、申請はインドネシア法務人権省の入国管理総局が運営する公式サイト(eVisa.imigrasi.go.id)を通じて行うのが一般的です。
申請に必要な書類は、パスポート(残存有効期間6カ月以上)、雇用契約書のコピー、IMTAの承認証明書、パスポートサイズの写真、そしてスポンサー企業からの推薦状などです。雇用主側がオンライン申請を行い、システム上で書類をアップロードし、規定の申請料を支払うことで手続きが進みます。申請が承認されると、電子ビザ(e-Visa)として発行され、登録されたメールアドレスに通知が届きます。この電子ビザを印刷して入国時に提示すれば、正式な就労ビザ(ITAS)の保持者としてインドネシアでの活動が認められます。
なお、申請プロセスの中で最も注意すべき点は、提出書類の不備や職務内容とIMTA記載内容の不一致です。これらは審査の遅延や却下の原因となるため、企業側と申請者本人の間で情報を正確に共有しておくことが大切です。
就労ビザ(ITAS)の有効期間と更新
就労ビザ(ITAS)の有効期間は、一般的に6カ月・1年・2年のいずれかで設定され、職種や契約内容、雇用期間によって異なります。短期契約の専門職や技術指導員であれば6カ月、長期駐在員やマネジメント職であれば1年または2年のITASが発給されるケースが多く見られます。有効期間が満了する前にインドネシア国内で更新手続きを行うことが可能で、更新の際にも雇用主によるスポンサー継続が前提となります。
更新手続きには、引き続き雇用契約が継続していることを証明する書類、最新のRPTKA・IMTA情報、パスポートの有効期限確認、そしてITASの現行データが必要です。更新は通常、満了の少なくとも1カ月前から申請を行うことが推奨されています。更新時には再度手数料が発生し、審査の過程で面接や追加確認が行われる場合もあります。特に職務内容や勤務先が変更された場合は、既存のITASが無効となる可能性があるため、変更内容を速やかに当局へ報告する義務があります。
ITASの更新を怠ると、オーバーステイ(滞在超過)とみなされ、1日あたり1,000,000ルピアの罰金が科されるほか、60日以上の超過では国外退去および再入国禁止処分を受けることもあります。そのため、期限管理を徹底し、早めの更新手続きを心がけることが不可欠です。
DKP-TKA(外国人労働者徴収金)
インドネシアで外国人を雇用する際、雇用主には「DKP-TKA(Dana Kompensasi Penggunaan Tenaga Kerja Asing)」と呼ばれる外国人労働者徴収金の支払い義務があります。これは政府が外国人雇用に伴う社会的コストを補うために設けた制度で、1人あたり月額100米ドルを基準として徴収されます。支払いは雇用主が負担し、労働者本人が負担することはありません。
DKP-TKAの納付は、IMTAの発給後に適用され、期間中は毎月定期的に支払う必要があります。未納や遅延が発覚した場合は、IMTAの無効化や罰金処分が科される可能性があり、雇用主にとって重大な法的リスクとなります。この制度の導入により、外国人雇用が国の雇用政策と社会開発に資する形で管理されており、適切な納付を行うことで企業の信頼性向上にもつながります。
DKP-TKAの支払い管理は、すべてオンラインシステム上で行われ、証明書(Payment Receipt)が発行されます。これは就労許可の更新や監査の際に提出を求められる重要な書類であり、企業はこれを必ず保存しておく必要があります。
インドネシアの就労ビザ制度は、外国人の合法的な雇用と現地雇用の保護を両立するために細かく設計されています。申請手続きは複雑であり、制度変更も頻繁に行われるため、最新情報の確認が欠かせません。日本人を含む外国人が安心して現地で働くためには、信頼できる雇用主と緊密に連携し、RPTKAからITAS、DKP-TKAに至るまでのすべてのプロセスを正確に理解・遵守することが何よりも重要です。
インドネシアのビザ制度と入国ルールの全体像
インドネシアに入国する際には、渡航目的に応じて適切なビザを取得することが必須である。観光、商用、就労、あるいは長期滞在など、活動内容によって申請するビザの種類が異なる。特に日本人を含む外国人の入国管理は年々デジタル化が進み、従来の空港での手続きに加え、オンラインによる事前申請「e-Visa」制度の利用が拡大している。ビザの種類や有効期限、延長の条件を正しく理解していないと、滞在中のトラブルや罰則の対象になる場合もあるため、最新情報を踏まえた準備が重要となる。
観光・ビジネス目的のビザ
30日以内の短期滞在ビザ(Visa on Arrival・e-VoA)
観光や短期の商談など、30日以内の滞在であれば「Visa on Arrival(到着ビザ)」、またはオンライン申請による「e-VoA」を利用することができる。これらはインドネシアの主要な国際空港や港で発給され、費用は500,000ルピア前後と比較的手頃である。取得には、入国時点で6か月以上の有効期間を持つパスポートと出国航空券の提示が求められる。現地のカウンターで手続きを行い、その場で支払いを済ませる方法のほか、近年ではオンラインで事前申請を行い、メールで届くビザを印刷して提示する方法が推奨されている。滞在期間は30日間で、1回のみ30日の延長が可能であり、観光客や短期出張者にとって最も利用しやすい制度といえる。
30日以上の長期滞在ビザ(e-Visa)
一方で、30日を超えて滞在する場合は、渡航前に「e-Visa」を取得する必要がある。e-Visaにはシングルエントリーとマルチプルエントリーがあり、前者は1回の入国で最大60日間の滞在が可能、後者は複数回の出入国を認め、有効期限は最長で5年となっている。ビジネスミーティング、展示会、講演、取材、監査、品質検査、アフターサービスなど、活動目的に応じて細かくカテゴリが分かれている点が特徴だ。申請はすべてオンラインで完結し、必要書類をアップロードしてクレジットカードで手数料を支払うと、Eメールでビザが発行される。
就労目的のビザと手続き
雇用主によるスポンサーシップ
外国人がインドネシアで働くためには、現地企業や団体がスポンサーとなることが前提条件となる。まず雇用主が「外国人雇用計画(RPTKA)」をインドネシア労働省に申請し、外国人雇用の必要性を認められる必要がある。その承認後、労働許可証である「IMTA(外国人就労許可)」の発行申請が行われ、これが外国人労働者の就労を法的に裏付ける重要な許可証となる。
ITAS(就労ビザ)の申請と有効期間
RPTKAとIMTAが揃った段階で、外国人本人は「ITAS(就労ビザ)」を申請できる。この申請はオンラインで行われ、承認後に電子ビザがメールで送られてくる。申請に必要な書類は、パスポートのコピー、雇用契約書、IMTA、推薦状、証明写真などである。ITASの有効期間は6か月から2年まであり、職種や契約内容によって異なる。期間満了後の更新も可能だが、その際もスポンサー企業の手続きが必須となる。
DKP-TKA(外国人労働者徴収金)
外国人を雇用する企業には、「DKP-TKA(外国人労働者徴収金)」として月額100米ドルの支払い義務がある。これは雇用主が負担するもので、外国人労働者本人に課される費用ではない。この制度は、インドネシア国内の雇用機会保護と外国人雇用の適正管理を目的として設けられており、企業が法令を遵守して労働者を雇用しているかどうかの重要な指標となる。
入国・滞在後の手続きと注意点
VOA(到着ビザ)とその延長手続き
到着ビザは30日間有効で、1回のみ延長が可能である。延長はオンラインの「e-Visa申請サイト」で行い、手続き完了後に居住地を管轄する入国管理局で本人確認のための面接や指紋採取が実施される。延長手続きの際は、滞在期限の14日前までに申請することが推奨される。万一、滞在期間を超過した場合は、1日あたり1,000,000ルピアの罰金が科せられ、60日以上の超過では国外退去処分および再入国禁止措置を受ける可能性がある。
長期滞在者の登録手続き
ITASまたはITAP(永住許可)を取得して長期間滞在する外国人は、入国後に居住地を管轄する警察署や住民登録局に届け出を行う必要がある。具体的には、警察署での届出書(STM)、居住証明書(SKTT)、家族カード(Kartu Keluarga)、住民登録証(KTP)などの手続きを行うことが義務づけられている。これらの登録を怠ると罰則の対象となる場合があるため注意が必要だ。
医療支援と生活サポート
長期滞在者や駐在員にとって、医療体制の確保は安心して生活するための重要な要素である。株式会社Medifellowでは、日本人専門医によるオンライン診療および医療相談サービスを展開しており、海外旅行保険ではカバーしきれない健康不安にも対応している。厚生労働省のガイドラインに準拠した遠隔診療体制を整え、必要に応じて現地病院への紹介状の作成やセカンドオピニオンの提供も行っている。急な体調不良や感染症の発症時など、海外生活における医療リスクを最小限に抑える仕組みとして利用者が増えている。
最新の入国管理情報と公式ガイドライン
インドネシアの出入国制度は頻繁に改正されるため、常に最新情報を確認することが重要である。出入国管理および矯正省の公式サイト(https://www.imigrasi.go.id/)では、最新の査証分類や申請方法、必要書類の詳細が公開されている。また、在インドネシア日本国大使館や在京インドネシア大使館でも日本語で最新情報が発信されており、ビザ申請前にはこれらの公式情報源を参照することが推奨される。
インドネシアでは観光や短期滞在から長期就労まで幅広いビザ制度が整備されているが、それぞれに明確な要件と制限が存在する。正しいビザの選択と適切な手続きが、安全で円滑な滞在への第一歩であり、特に就労を目的とする場合には、雇用主との連携と法令遵守が不可欠である。
インドネシアの賃金・賞与・退職金・残業代に関する労働法の概要
賃金制度の基本と定義
賃金とは何か
インドネシアにおける「賃金(Upah)」とは、労働者が使用者に提供する労働の対価として支払われるすべての報酬を指し、基本給のほか、手当、賞与、インセンティブ、福利厚生の一部が含まれる場合もある。賃金は労働契約、企業内規則、または労働法令によって定められており、支払い額や構成内容は労働者が行う職務、責任、成果に応じて公平でなければならない。特にインドネシア労働法(2003年法律第13号)では、賃金の公正性を確保することが雇用者の義務として明文化されている。
賃金体系と支払いの構造
賃金体系は企業や業種によって異なるが、一般的には「基本給+固定手当+変動手当」で構成されている。固定手当には住宅手当や交通費、家族手当などが含まれ、変動手当としては成果報酬や販売手数料などが挙げられる。大企業では職種・能力・勤続年数を基準とした職能給制度を採用しており、昇給は定期評価に基づいて行われる。また、就業規則や雇用契約書には賃金の構成要素を明示することが義務付けられており、曖昧な表現での契約は労働監督局から是正指導を受ける可能性がある。
残業手当とその計算方法
インドネシアでは、法定労働時間は1日8時間または週40時間と定められており、これを超える勤務は「残業(Lembur)」として割増賃金の支払いが義務付けられている。残業手当は通常賃金の1.5倍から始まり、時間が増えるごとに2倍となる計算方式を採用している。残業を行う際は労働者本人の同意が必要で、会社側が一方的に命じることはできない。また、週あたりの残業上限は14時間と規定されており、これを超える場合には特別許可を取得する必要がある。
賃金の支払い方法と時期
支払い方法の原則
賃金は原則としてインドネシア通貨(ルピア)で支払うことが義務づけられており、現金または銀行振込で支払うのが一般的である。多くの企業では給与口座を通じて支払う方法が採用され、給与明細の電子化も進んでいる。給与の支払い遅延は労働法違反となり、罰則や行政指導の対象になるため、企業は支払い期日を厳守しなければならない。
支払いの頻度と時期
賃金の支払いは最低でも月1回以上が義務とされている。ほとんどの企業では月末締め・翌月支払いの形態を採用しているが、建設業や製造業などでは週払いを実施する場合もある。支払い日や方法は労働契約に明記し、変更する際には労働者代表または労働組合との協議を経る必要がある。
最低賃金制度(Minimum Wages)の概要
インドネシアの最低賃金は、全国最低賃金(UMN)と地方最低賃金(UMPまたはUMK)の二層構造で運用されている。各州や県ごとに物価水準や生活コスト、経済成長率を考慮して毎年見直され、ジャカルタやスラバヤなどの都市部は地方よりも高い基準が設定されている。企業は最低賃金を下回る給与を支払うことが禁止されており、違反が発覚すると罰金や是正命令が科せられる。最低賃金は単に生活水準を守るための基準ではなく、社会的安定を維持するための重要な政策手段として位置づけられている。
退職金制度の仕組み
退職手当(Severance Pay / Uang Pesangon)
退職手当は、労働者が解雇または契約終了に伴い退職する際に支払われる金銭的補償である。インドネシアでは勤続年数に応じて退職手当の金額が細かく定められており、1年以上勤務した労働者には最低でも1か月分の基本給が支給される。最長で9か月分まで支払われるケースもあり、雇用者は労働契約終了後、速やかに支払いを行う義務がある。
勤続慰労金(Tenure Award / Uang Penghargaan Masa Kerja)
勤続慰労金は、長期勤務した労働者に対して感謝の意を込めて支払われる報奨金である。通常は5年以上勤務した従業員が対象となり、年数に応じて支給額が増加する。企業によっては退職金と併せて支給する制度を設け、忠誠心を評価する文化的要素として定着している。
権利損失補償金(Compensation of Rights / Uang Penggantian Hak)
これは、未取得の年次有給休暇や未支給の手当など、労働者が本来受け取るべき権利を補償するための支払いである。解雇や契約終了の際にまとめて精算されるのが一般的であり、労働者保護の観点から法律で明確に規定されている。
解雇金(Detachment Money / Uang Pisah)
労働者が自己都合で退職する場合や、規律違反によって解雇される場合に支払われるのが「解雇金」である。法定義務ではないものの、企業が自主的に設定している場合が多い。金額は雇用契約や就業規則で定められており、企業文化や労使協定によって大きく異なる。
賞与・宗教祭日手当(THR)などの特別支給
賞与・ボーナス制度
インドネシアではボーナスの支給は法定義務ではないが、企業文化として広く浸透している。多くの企業が年1回以上、業績評価や勤続年数に応じてボーナスを支給しており、一般的には1〜3か月分の給与が支払われる。特に外資系企業では、成果主義を反映した業績連動型ボーナス制度を導入しているケースが多い。
宗教祭日手当(Tunjangan Hari Raya / THR)
THRはインドネシアの労働者にとって最も重要な特別手当であり、宗教行事の時期に全労働者へ支給される。イスラム教徒の場合は断食明け大祭(イドゥル・フィトリ)の前に支給され、1年以上勤務している労働者には1か月分の基本給が支給される。1年未満の勤務者は在籍期間に応じて按分される。宗教や国籍を問わず全労働者が対象であり、未払いは法的違反とみなされる。
休日・休暇制度の全体像
公休日と年間スケジュール
インドネシアの公休日は多宗教国家らしく多様であり、イスラム教・キリスト教・ヒンドゥー教・仏教など複数宗教の祭日が祝日に指定されている。年間の祝日数は平均15日前後で、政府が毎年カレンダーを告示している。
長期休暇制度
一定期間勤務した労働者には「長期休暇(Cuti Panjang)」が付与される。一般的には6年勤務ごとに1か月間の有給休暇が与えられる制度で、企業の忠誠度を高める目的で導入されている。
祈祷休暇と宗教的配慮
イスラム教徒の労働者には、1日5回の礼拝を行うための祈祷時間が認められている。金曜日の昼礼拝(ジュムア)に関しては特に重要視され、企業側もこの時間に会議を設定しないなどの配慮が求められる。
慶弔・有給・病気休暇
結婚、出産、家族の死去などの場合、労働者には「特別休暇(Cuti Khusus)」が与えられる。さらに、1年以上勤務した従業員には年間12日間の有給休暇が付与される。病気やケガによる休業の場合は、診断書の提出により一定期間の有給病気休暇が認められ、社会保険(BPJS)から給与補償を受けられる場合もある。
まとめ
インドネシアの労働法は、賃金から退職金、休日制度に至るまで労働者保護を目的として体系的に整備されている。企業にとっては、これらの法令を遵守することが信頼性の確保と人材定着の鍵となり、労働者にとっては安定した雇用環境の礎となる。とくに賃金や退職金、宗教的手当(THR)などの支払いは、単なる報酬ではなく文化・宗教・社会的慣習に根ざした制度として尊重されており、インドネシアでのビジネスを成功させるためには、この労働文化への理解が不可欠である。

